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年金2千万円不足問題で見えた30年後の年金

参院選では期待したほど議論が深まらなかったが……

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

高齢世代から半減する現役世代の貯蓄額

 しかし、だからといって、政府・自民党の言うように「年金で老後は安心」なのかと言うと、そう簡単ではありません。高齢世帯に比べ、現在の現役世代の貯金額は、世代によって異なりますが、おおむね1300万円(中央値800万円)とほとんど半減します(2018年版家計調査。ライフステージによる影響も考えられますが、あくまで概算ということで考えていただければと思います)。

拡大kazoka/shutterstock.com
 親の貯金は前述の計算上使いはたされ、遺産として残りません。また、現在の賦課方式では、人口構成上30年後の厚生年金の支給額は現在の価値で15万円程度にならざるを得ないと推定されます(この点については、後で解説します)。

 とすれば、今の現役世代が年金と貯金の取り崩しで暮らす場合、平均で月18万円程度になるのですが、これは今の高齢者世代より月8万円低く、生活保護水準に近いレベルです。今の現役世代が、今の高齢者世代と同程度の生活をしようとするなら、さらに4~5千万円程度の貯金が必要ということになります。

世代内と世代間の格差を含む複雑な問題

 以上、「年金2千万円不足」問題は次のように整理されます、

(1)現在の高齢者世代は高度成長期に平均2千万円の貯金をし、現在2人世帯で平均月21万円の年金を受け取り、貯金を切り崩しながら平均月26万円という、そう悪くない生活をしている。

(2)一方で、国民年金しか受け取れない世帯や、貯金がない世帯(30%程度の世帯が無貯金です)は、これよりはるかに低い生活水準である。

(3)30年後には、厚生年金を受給している2人世帯で、平均月18万円程度で暮らすことになる。

(4)30年後に国民年金しか受け取れない世帯や、貯金がない世帯は、(3)より低い生活水準で暮らす事になる。

 要するに、年金2千万円不足問題は、それだけにとどまらす、世代内の格差と世代間の格差を含んだ、非常に複雑な問題なのです。

人口の推移と厚生年金支給額

 ところで、先に「現在の賦課方式では、人口構成上30年後の厚生年金の支給額は現在の価値で15万円程度にならざるを得ない」と書きましたが、その根拠は将来推計人口です(日本の将来推計人口)。

 現在、厚生年金は年間ざっと4400万人の加入者から48兆円の保険料を集め、うち46兆円を3500万人ほどの受給者に給付しています(平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況)。平均は年間135万円、月あたり11万円で、これが前述した厚生年金の2人世帯の平均支給額21万円(1万円ずれてはいますが)になっています。マクロスライド方式等々の細かい話をするまでもなく、賦課方式においては、基本的には、現在集めた保険料が、現在の受給者に分配されるのです。

 では30年後の2049年はどうなるでしょうか。現在の7462万人の生産年齢人口は5333万人へと30%減少し、現在3592万人の65歳以上の高齢者人口は3859万人へと7%程上昇します。これと同じ比率で、厚生年金の加入者と受給者数が増減すれば、加入者が3144万人、受給者が3760万人と逆転します。この時、加入者が現在と同じ保険料を支払うとすると、保険料収入は33兆円に減少し、これを3653万人の受給者で分配するので、受給額は月額7万6千円になるわけです(経済成長、物価上昇を無視していますが、それは30年後の支給額を現在の価値に引き直した額ということになります)。

 もちろんこれらの数字は概算ですし、マクロスライド方式等々で変わり得ますが、賦課方式を継続する以上、大枠の計算は変わりようがなく、現在の30代が年金をもらう30年後、その支給額はほぼ確実に、現在の平均月11万円から、平均月7万6千円まで低下するのです。

拡大takkun/shutterstock.com

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 衆議院議員・弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2022年衆院選に当選(新潟5区)。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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