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大躍進し損ねた山本太郎・れいわ新選組に必要な事

得票に必ずしもつながらなかった演説会場の「熱狂」。来たるべき衆院選で大切な戦略は

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

れいわの選挙戦略に抱いた疑問

拡大当選確実となり記者会見で笑顔を見せるALS患者の舩後靖彦氏とれいわ新選組の山本太郎代表(右)=2019年7月21日夜、東京都千代田区
 これについては、賛否はあるでしょうが、私は率直に言って「候補者擁立戦略」が原因だと言わざるを得ないと思います。

 上記の通り、れいわ新選組はその政策・理念で熱狂的な支持者を摑(つか)みました。しかし、演説会にいかに多くの人が集まったとはいえ、一か所で数千人を超えることは稀です。得票率10%、500万票の「大躍進」を達成するためには、会場に足を運ぶほどではなく、熱狂しているわけではないけれど、「何となく共感する」位の有権者に支持を広げ、投票してもらわなければなりません。そのためには、党の政策・理念だけではなく、「誰が立候補しているのか」という候補者擁立戦略が、極めて重要になるのです。

拡大当選を決め、記者会見で笑顔を見せるれいわ新選組の木村英子氏(左)と山本太郎代表=2019年7月22日、東京都千代田区
 ここは間違えて欲しくないのですが、私は、重度身体障碍者である木村英子氏、舩後靖彦氏両名を「特定枠」で優先したことも、「タレント候補」と言えるような候補者を擁立しなかったことも、なにより山本太郎氏自身が当選確実な東京選挙区に立候補せず、野原善正氏を擁立したことも、その狙いやコンセプトが悪いと言う積りは毛頭ありません。「理想の高さ」という点では、素晴らしいと思います。

 しかし、残念ながら山本氏の理想とは別に、選挙には選挙の「現実」があります。こんなことを言うとがっかりされるかもしれませんが、「選挙の現実」として、候補者の王道は、今なお、「クラスのヒーロー、ヒロイン」なのです。

票を集めるのは誰か

 繰り返し間違ってほしくないのは、これはそうでない人は候補者にふさわしくないなどと言う「適格性」の議論ではまったくなく、「誰が票を集めるか」という「結果論」「現実論」の話です。

 容姿は現実の政治を行ううえではほとんど関係ありませんが、しかし現実には、同じ条件で戦えば、やはり美男美女が票を集める結果になります。だからこそ、各候補は選挙ポスターを作るに当たっては、何百枚も撮った写真の中から最も映りのいいものを選び、中には「もはや詐欺だろう」というレベルまでフォトショップを駆使したり、写真の年代を遡ったりする候補者も出るのです。

 また、運動能力も基本的には政治を行うには無関係です。しかし、現実をみると、人はおうおうにしてたくましく、きびきび動く人を有能だと思い、票を入れます。だからこそ各候補者は、少なくともテレビカメラが回っている場面では、どんなに疲れていても、有権者のもとに全力疾走で走りますし、なかには演説のたびに意味も無くバク宙をする候補者すらいます(私です……苦笑)。

 知名度に至っては、議員になった後の活動には全く関係ありませんが、しかし現実には、人は自分が知っている名前の人に投票します。知名度の高い候補者と低い候補者が同じ条件で戦えば、多くの場合知名度の高い候補者が勝ちます。だからこそ各候補者は、少しでも知名度を上げようと選挙カーで名前を連呼し、その効果は各種の調査で立証されています。それが、選挙の現実なのです。

 れいわ新選組の擁立した候補者は、率直に言って、山本太郎氏以外は「クラスのヒーロー、ヒロイン」タイプではありませんし、知名度も非常に高いとまでは言えませんでした。この候補者擁立戦略をとる以上、コアな支持者の熱狂は得ても、その外側の、一般的な有権者に支持を広げる事は困難で、得票率、獲得議席が「大躍進」に至らず「停滞」したのは、「従来の選挙セオリー」から考えたら、あまりに当然の結果だったのです。


筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 衆議院議員・弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2022年衆院選に当選(新潟5区)。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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