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ローマ法王は被爆地の広島・長崎で何を語るのか

核軍縮に逆行する動きが目立つ世界で、核廃絶の機運を再び高められるのか

高橋 浩祐 国際ジャーナリスト

訪日を要請した政府、自治体、教会

 日本政府、広島市や長崎市、教会関係者らは早くから法王の訪日実現に向けて尽力してきた。

拡大フランシスコ法王(右)に広島市長と連名の親書を手渡す田上富久長崎市長(左)=2018年5月2日、©Vatican Media Foto、長崎市提供
 安倍晋三首相は2014年6月にカトリックの総本山バチカンで法王と面会し、来日を招請した。広島市の松井一実市長も2017年11月、バチカンのサンピエトロ広場で法王の一般謁見(えっけん)に参列、長崎市の田上富久市長と連名の文書を手渡し、広島と長崎への訪問を要請した。田上市長も2018年5月、同広場での一般謁見に参列、「被爆地から核兵器廃絶に向けたメッセージを発信していただくことを切に願っている」とする両市長連名の親書を手渡し、長崎と広島への訪問を要請した。

 7月17日の外国プレスとの会見で、広島市の松井市長は「ローマ法王が広島市と長崎市を訪問するという報道がある。実現すれば大変喜ばしいこと」と述べた。そして、「ローマ法王が来られるということであれば、被爆の経験をし、同じような惨禍を許さないための取り組みを続けている私たちを勇気づけることになる。さらに被爆者の思いに立脚した核兵器廃絶、そして、世界恒久平和の実現という被爆地の願いをしっかりと受け止めた上で何らかの力強いメッセージを発信していただけるのではと思っている」と期待を表明した。

 長崎市の田上市長も、ローマ法王の来日について、「私たちもバチカンを訪れてローマ法王に直接長崎への訪問、広島への訪問をお願いした経緯がある。そういう意味では、この訪問が実現することは私たちにとっては大変嬉しいこと」と語った。そのうえで、「法王ご自身が核兵器廃絶を願っておられる方なので、そのメッセージをぜひ被爆地から発していただきたい」「『長崎を世界最後の被爆地に』というメッセージをぜひここから発信していただきたい」と述べた。

拡大広島市の松井一実市長=高橋浩祐撮影
拡大長崎市の田上富久市長=高橋浩祐撮影

「戦争は人間の仕業」メッセージの意義

 ヨハネパウロ2世は来日時に「平和アピール」を発し、「戦争は人間の仕業である」とのメッセージを残したことで知られている。

 ヨハネパウロ2世のメッセージについて、田上市長は「原爆が神の仕業ではなく人間が引き起こしたことだという大きなメッセージだった。逆に言うと人間の手によってなくすことができるというメッセージでもあった。今回もフランシスコ法王の来日によって、再び歴史に残るメッセージを発信していただきたい。そして、それを多くの人々がずっと語り継いでいくことができる平和へのメッセージを残していただけることを期待している」と述べた。

潜伏キリシタン関連遺産の言及に期待

 また、田上市長は、2018年夏に世界文化遺産に登録されたばかりの「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本)の意味や価値について、法王に語ってもらうことにも期待を示した。

 「潜伏キリシタン関連遺産という世界遺産が2年前に登録された。250年間ほど神父もいない中で隠れて信仰を守り続けた歴史が世界遺産として価値があるということが認められた。しかし、いまだの世界にはこの世界遺産の価値というのも十分に伝わっていない。その意味で、ローマ法王がこの長崎でその世界遺産の意味や価値を語っていただくことに私たちは大変期待をしている」

 長崎・外海(そとめ)地方を舞台とする遠藤周作の小説「沈黙」は、禁教令の下、権力者による迫害を受けてきた潜伏キリシタンの受難の歴史を描く。そして、宗教の自由の大切さや信仰の崇高さを教えてくれている。フランシスコ法王はいったいどのようなメッセージを世界に発するだろうか。

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筆者

高橋 浩祐

高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。

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