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「モリカケ」を凌いで令和を迎えた安倍政権の本質

平成政治の興亡 私が見た権力者たち(20・最終回)

星浩 政治ジャーナリスト

公文書の書き換えが発覚

 年が明けて2018年、安倍政権の足元を揺るがす事実がまたもや明らかになる。

 3月2日、朝日新聞が「森友文書 書き換えの疑い」と報じる。森友学園への国有地売却に関する決裁文書が改ざんされていた疑いがあるという。3月7日には問題の国有地売却を担当していた近畿財務局の職員が自殺、衝撃が広がった。結局、財務省は改ざんの事実を認め、改ざん当時に財務省の理財局長だった佐川国税庁長官は辞任に追い込まれる。

拡大佐川宣寿国税庁長官の辞任を受けて記者会見する麻生太郎財務相=2018年3月9日、東京・霞が関
 財務省の調査によると、決裁文書に昭恵夫人に関する記載が数多くあり、財務省の担当課長らが問題視して近畿財務局の担当者に削除・改ざんを命じたという。だが、安倍首相の「私や妻が関係していたなら、総理大臣も国会議員も辞める」という発言との関係や、佐川氏がどう関与したのかについて、この調査はつまびらかにしていない。また、公文書改ざんという前代未聞の不祥事にもかかわらず、管理責任者である麻生副総理・財務相は引責辞任を拒み続けた。

 4月10日には加計学園問題でも新事実が明らかになった。

 同日付の朝日新聞が愛媛県の内部文書をスクープ。そこには、県庁の担当者が2015年4月に首相官邸で柳瀬唯夫・首相秘書官(当時。その後、経済産業審議官)と面会した際、加計学園の獣医学部開設問題について「この件は、首相案件」と言われたことが書かれていた。

 柳瀬氏は5月10日、衆参両院の予算委員会に参考人として招致され、加計学園との関係を追及された。愛媛県や今治市の職員との面会は認めたものの、陳情を受けただけで「首相案件」という発言もしていないと答弁。疑惑の解明は進まなかった。

平成から令和へ

 2018年9月の自民党総裁選で、安倍首相は対立候補の石破茂元幹事長を大差で退け、さらに3年の任期を手にした。

 直後に開かれた秋の臨時国会では、外国人労働者の受け入れを「特定技能」などの形で拡大する法案が審議された。野党側は現行の「技能実習制度」で受け入れられている外国人労働者の失踪などが相次いでいることなどを指摘。特定技能制度でも外国人労働者の受け入れ態勢が十分ではないなどと反発したが、自民、公明両党は採決を押し切り、法案は12月8日に参院本会議で可決、成立した。2019年4月から施行され、外国人労働者の受け入れが拡大されることになった。

 4月30日には予定どおり天皇陛下の生前退位がおこなわれた。退位に先立ち、4月1日には菅義偉官房長官が新元号「令和」を発表。30日には退位の式典、5月1日には新天皇の即位の式典が、滞りなく執りおこなわれた。平成が終わり、令和が始まった。

 生前退位は、天皇陛下自身の意向を受けて進められた。2016年8月8日に陛下がビデオメッセージで退位についての考え方を表明。「象徴」としての務めを果たすためには、健康なうちに譲位する必要があると判断したという。これを受けて、政府と国会は退位のための特例法を定めることで合意。関連法の成立を受けて、退位、即位が行われた。

 天皇を「国民統合の象徴」と定めた現憲法下では初めての退位である。事実上、天皇の意向を受けた退位関連法の制定ではあったが、国会が慎重な審議を進めたこともあり、天皇は「国政に関する権能を有しない」と定めた憲法の規定に抵触しないぎりぎりの立法措置となった。

「改憲勢力」が3分の2を割った参院選

拡大参院選を受けた安倍晋三首相(左端)の記者会見に出席する、自民党の(右から)甘利明選対委員長、岸田文雄政調会長、加藤勝信総務会長、二階俊博幹事長=2019年7月22日、東京・永田町の党本部
 7月には令和初の国政選挙となる参院選が実施された。4日公示、21日投開票で、結果は、改選数124のうち自民党が改選前の66議席から9減らして57議席。非改選と合わせて123議席で、単独過半数を割った。公明党は14議席を確保し、自公では71議席と改選過半数の63を上回った。自公に維新を加えた憲法改正に前向きな「改憲勢力」は、参院全体の3分の2に届かず、安倍首相のめざす憲法改正は再検討が迫られることになった。

 野党側は、立憲民主党が改選前の9議席を17議席まで伸ばし、国民民主党は8議席から6議席、共産党も8議席から7議席に減らした。自民党と野党統一候補が一騎打ちとなった32の「1人区」では、「自民」対「野党」が22対10だった。山本太郎・前参院議員が率いる「れいわ新撰組」は「消費税廃止」などを訴え、比例区で2議席を獲得した。

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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