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首相演説、謎の黒服に阻まれたプラカード

首相、もう潮時です。40年越しに「真の女性活躍」を進めた首相になってください

井田奈穂 「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局長

「経済成長と関わりがない」という発言の衝撃

 再婚後、あまりに大変な改姓手続きと自己喪失感で苦しんでいた私がTwitterを始めたのは、2018年1月のこと。投稿を始めると、同じ思いを持つ人たちと、面白いようにつながっていきました。

 姓を変えずに結婚したい。でも、法律を変えるにはどうすればいいかわからない。政治活動経験はゼロ。「とりあえず、国会議員に相談じゃない?」と、数人で地元選出の自民党・松本文明衆議院議員に会いに行くことになりました。

 「いろいろなところから本人が声を上げるといい。地元の人が望んでいるのがわかれば議員も動く。党本部にも行くといい」

 そんなアドバイスをもらい、中野区議会に陳情を出したところ、たくさんの議員が応援してくれ、選択的夫婦別姓の法制化を求める意見書を国に送ることができました。

 これに背中を押された私は、11月に「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」のサイトを開設。Twitterで参加を呼びかけると、北海道から沖縄までメンバーが集まってきました。

 現在の登録者数は約120人。それぞれ地元の議会から国会を動かしてもらえるよう、議員に働きかけています。

 6月30日のネット党首討論で安倍首相は「選択的夫婦別姓は、女性の社会参画のために不可欠ではないか?」と問われ、「我々はいわば、経済成長とは関わりがない、という風に考えています」と答えました。

 この言葉は、とにかく悲しかった。がっかりしました。

 望まない改姓は、個人の尊厳を傷つけ、苦痛を与えます。自分の名前で仕事をしてきた人にとっては死活問題です。でも、どちらか改姓しなければ結婚できない。だから男性優位の日本社会では、96%の男性は妻に譲ってもらい、改姓せずに結婚しているのです。(参照 平成28年度人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概況

 この点が女性差別にあたるとして、日本は国連から3度にわたり、夫婦別姓を認めるよう勧告されていますが、応じていません。

 安倍首相の発言を聞いて、「女性に自分自身が生まれ持った名前を名乗らせたところで、国として儲からない」と言われたように感じました。

 「生産性」の話題が頭をよぎったのは、私だけではないでしょう。

拡大党首討論で選択的夫婦別姓を認めるかとの質問に、ただひとり手を上げない安倍首相=日本記者クラブ提供


筆者

井田奈穂

井田奈穂(いだ・なほ) 「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局長

1975年、奈良県生まれ。IT業界で働く傍ら、Twitterでつながった仲間と地元議会に陳情を出したことをきっかけに2018年11月、選択的夫婦別姓の法制化を求める団体を設立。全国の地方議会で同制度推進の意図での意見書可決が急増する発端を作った。早大・棚村研究室と共同で47都道府県で7000人対象の意識調査を行ったほか、2021年には国会内では自民党含め、7つ党で国会議員向け勉強会を実施。現在メンバー登録者数は約600名。公式サイト:https://chinjyo-action.com/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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