メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

日産のガバナンスミス?を突いたゴーン前会長

異文化マネージメントの観点からオランダに子会社を作ったことの功罪を考える

酒井吉廣 中部大学経営情報学部教授

オランダという国

 オランダは、欧州最大の港であるロッテルダムを抱え、国際貿易が盛んなほか、ユニリーバやフィリップス、ロイヤルダッチシェル、ハイネケンなどの大企業もあり、GDPはEUでは六番目である。チューリップに代表される一次産品も重要な輸出品である。

拡大S-F/shutterstock.com
 余談だが、アムステルダムにあるスキポール空港は、エアーフランス=KLMグループに属するKLMオランダ航空のハブとして、欧州への出張者向けの配慮が行き届いたサービスがある空港だ。例えば、筆者は空港に向かう車の中から電話することで、搭乗を出発ぎりぎりまで待ってもらうという経験をした。

 これは一度の出張で複数の国を回る人間にとっては捨てがたいサービスである。欧州の窓口、または欧州の出口とするには、パリのドゴール空港やロンドンのヒースロー空港より便利な空港といってもいいかもしれない。

 半面、オランダと言えば、大麻を普通に買える国、「飾り窓」(風俗産業)が合法的に存続している国という印象も強い。

 つまり、オランダは自由な国なのだ。しかし、その自由さは企業経営や金融規制という観点では、必ずしも良い結果を招くとは限らない。

 例えば、日本のどの企業も取り組んでいるであろうJSOX(アメリカのSarbanes Oxley法に基づく内部管理を日本版に応用したもの)で、企業内をグローバルに一律管理しようとした場合、オランダでは法制度に対する考え方が異なるという現実にぶつかる。印象としては、法律の運用の仕方が緩い。その違いを考慮しないと、現地の実態的なルールより厳しいコンプライアンスと受け取られ、現地職員の不満に繋がりかねない。

 最近でこそ、EU内の企業誘致競争があって、このような問題は減る方向にあるが、完全になくなっているわけではない。

日産にふさわしくないオランダの子会社

 かつては金投資口座や日本国債リンク債の現物資産である金や日本国債は、オランダの金融機関に預けられていることが多かった。また、欧米のヘッジファンドが日本国債のショート・ポジション(価格が下がることで儲けるポジションのこと)をとる際、現物を借りてそれを担保に先物を売却する時、日本国債の現物を預ける場所として利用されていたのも、オランダにある金融機関であった。

 ところが、オランダの法制は、EUに加盟した後も、他の国と同じような厳しさがあるようでいて厳しくないところがある。誤解を恐れずにあえて言えば、数年前にデフォルト寸前まで行ったギリシャの税務当局のように規制の適用に甘いところがあるため、果たしてどこまで信じてよいのか疑問に感じるケースが少なくなかった。逆に、だからこそ、現在もGAFA(グーグル、アマゾン、フェースブック、アップル)がオランダに現地法人をつくっているとも言える。

 結局、日本からは遠い欧州大陸にあり、このような性格の国に、国内生産に頼る自社製品を売って利益を上げるというシンプルなビジネスモデルを持つ日産が、同じ日本のメーカーである三菱自動車とのアライアンスのための共同子会社を作るということは、正攻法な経営ではない。

 従って

・・・ログインして読む
(残り:約2550文字/本文:約5173文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

酒井吉廣

酒井吉廣(さかい・よしひろ) 中部大学経営情報学部教授

1985年日本銀行入行。金融市場調節、大手行の海外拠点考査を担当の後、信用機構室調査役。2000年より米国野村証券シニア・エグゼクティブ・アドバイザー、日本政策投資銀行シニアエコノミスト。この間、2000年より米国AEI研究員、2002年よりCSIS非常勤研究員、2012年より青山学院大学院経済研究科講師、中国清華大学高級研究員。日米中の企業の顧問等も務める。ニューヨーク大学MBA、ボストン大学犯罪学修士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

酒井吉廣の記事

もっと見る