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いかがわしい議長交代発言。さあ憲法をどうする 

自民党幹部の改憲シフト発言が波紋。小賢しい策は必要な改憲もできなくする?

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

改憲派の三つのグループ

 私はこれまで、日本の改憲派を三つのグループに分けてきた。

 第一のグループは、そもそも現行憲法が発布された当時から、これを憲法とは認めない「自主改憲派」だ。

 第二のグループは、時代の変化によって憲法に生じた不備を是正していく「時代対応派」である。具体的には、同日選挙や7条解散の是非、臨時国会の召集期限の問題、あるいは環境権のような新たな権利規定の明記などで、私はこれに近い。近年、改憲派が増加しているように見えるのは、この「時代対応派」が多くなっているからだろう。

 第三のグループは、アメリカとの間で「集団的自衛権の行使」ができるように強く望む外務省などの「日米一体化派」だ。これが、冷戦終結後の改憲派を強力に後押ししてきた。

 外務省が主導するこの改憲派は、2014年7月1日に集団的自衛権の行使容認が閣議決定されると“存在理由”を弱め、改憲戦線から離脱した。「これによって無理して9条を改正する必要はなくなった。改正議論のなかで逆に集団的自衛権の不行使を追加されたりしたらたまらない」と考えたのか、外務省は閣議決定以後、一変して「ハト派」や「護憲派」を装うようになった。

拡大集団的自衛権行使容認の閣議決定の後、会見する安倍晋三首相=2014年7月1日、首相官邸

泥沼にはまった集団的自衛権行使容認後の日本

 現行憲法の根本規範部分を、政府の解釈変更によって転換したこの時の閣議決定は、あまりにも問題が多い。 

 日本で集団的自衛権が論じられるとき、その相手国は事実上、アメリカに限られる。そうした印象を薄めようとするためか、外務省サイドから時折、オーストラリアなど他国の名前が追加された流されてくることもあるが、現実にはあり得ない。

 アメリカは言うまでもなく、世界最強の軍事大国である。それを承知で、アメリカに戦争を仕掛ける国はない。アメリカの戦争は、そのほとんどが「世界の警察」、「自由世界の警察」の名においてアメリカが仕掛けるものだ。この世界の警察としてのアメリカには最大限の敬意を払わざるを得ないが、そのアメリカを集団的自衛権の行使国とする日本にすれば、アメリカの都合で戦争に巻き込まれるリスクは非常に大きくなる。

 そもそも、アメリカとの集団的自衛権の行使に踏み切ることは、アメリカと軍事的一体化を意味する。とすれば、アメリカの敵対国にとっては、日本を攻めることがアメリカを攻めることにもなる。日本がアメリカの脆弱な脇腹になる様子が目に見える。

 もっと言えば、戦争を始めるか、終わらせるかも、日本の意思には沿わなくなる。この方向に一歩踏み出したら最後、とめどもない泥沼にはまっていくことを、日本は覚悟するべきだろう。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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