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野党が東北で健闘、与党が都市で勝った本当の理由

「今は都市で与党改憲派が強く、地方で野党護憲派が強い」という説明は正しくない。

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

「地方は野党護憲派が強い」は間違い

拡大参議院の登院表示盤を押す打越さく良氏。打越さんは新潟選挙区で野党各党の支援を受けて当選した=2019年8月1日午前8時13分、国会内
 まず、私には縁が深い新潟県を例にとって話しましょう。今回、野党候補が与党候補を破りましたが、長らく新潟での選挙に携わってきた者として、先述した選挙結果分析には端的に違和感を覚えます。

 まずもって、「地方で野党護憲派が強い」が正しくありません。確かにこの参院選において、野党候補は東北地方で健闘しました。とはいえ、地方の中の地方と言えるいわゆる「郡部」は、圧倒的に保守の地盤であり続け、野党候補の健闘は、県庁所在地に代表される「1区」における支持の強さが主な原因でした。「地方で野党が強い」はより正確に言うならば、「地方における主要都市で野党が強い」なのです。

 そもそも、今回の参議院選挙で最も重視したい政策課題として有権者が挙げたのは、トップが「社会保障」で29%、以下、「経済政策」が21%、「消費税」が19%で続き、「憲法改正」を挙げたのは8%に過ぎませんでした(NHK世論調査)。また、地方と都市の双方の有権者と接してきた経験からしても、地方において「護憲」に関心が高いとは到底思えません。あえて言えば、都市では「改憲」に対する許容度が地方よりは高いかもしれませんが、それも限定的です。

 むしろ実感としては、地方と都市における与党、野党の支持の差は、まさにNHKの世論調査が示す通り、「社会保障」「経済政策」についての評価の違いが影響している様に思えます。

「ぬるま湯」成長に満足する都市の有権者

 残念ながら、地方と都市で興味のある政策と政党支持を詳細に比較したデータがなく、「感覚」の話になってしまうのですが、地方と都市において、政策に対する考え方がもっとも違うのは憲法問題などではなく、「現行の経済政策継続への信認」と、その裏返しとしての「社会保障の必要性」ではないかと、私は感じています。

拡大robert cicchetti/shutterstock.com
 都市、ことに東京は、アベノミクスの恩恵を受ける大企業が集中し、その波及効果は小さくありません。それ以前の問題として、東京は平成8年から現在に至るまで、年間10万人、0.7%程度の割合で、一貫して人口が増加し続けています。

 人口が増え続ける限り、原則として地価は上昇し、新しい住宅が作られ、新しい街ができ、新しい店舗ができます。人々は現状の「経済政策」に満足し、生活への不安は比較的小さく、「社会保障の必要性」はさして自覚されません。

 ただ、経済政策が満足するに値するかといえば、疑問を禁じ得ません。アベノミクスによる経済成長は、2012年~18年の6年間に名目GDPで11%とされているものの、統計の変更により30兆円増加した分を差し引けば、掛け声倒れの4.7%にとどまります。7%程とされている実質GDPの伸びも、統計による増加分を差し引くと、わずか1%程度に過ぎず、「大きな成長」と胸を張れるようなものではないのです。

 にもかかわらず、リーマンショック後の不景気と、与党側がさかんに喧伝する「民主党時代の悪夢」がトラウマとなっているのか、都市の有権者はこの程度「ぬるま湯」成長の現状に満足しているように見えます。そこでは、変革への期待や意思はすっかり失われています。

 換言すると、都市における与党支持の高さは、都市の有権者がより大きな成長を目指した変革への意思を失い、アベノミクスの金融緩和と、人口の継続的増加によってもたらされている、経済と社会の相対的安定に満足して「保守化」したことにより、社会保障の必要性を感じないまま、いまの経済政策の継続を求めて与党に一票を投じていることが原因だと思えます。

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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