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7月16日(火) 午前中、局で「報道特集」の定例会議。その後、15時から日本ペンクラブの理事会。新しく理事になって実質的に初めて参加したのだが、ペンクラブの人々の相互コミュニケーションは大変なのだな、と実感。組織であるから一定の権力関係がある。権力の行使は「政治」を生む。政治の原理は、埴谷雄高によれば「敵を殺せ」である。この組織がめざしているものもあるのだろう。単なるもの書きの親睦組織ではあるまい。

 夕刻から神保町で打ち合わせ。日韓関係の急激な悪化や、参議院選挙の盛り上がりのなさについての議論。全部自分たちジャーナリスト、メディア関係者に跳ね返ってくることがらだ。その後、Yに行くと、敬愛するUさんが少し前までそこにいたとのこと。残念。お会いしたかった。

7月17日(水) 夏風邪に負けないために、からだを少し動かそうと無理を押してプールへと向かったが、泳いでいると、やっぱりちょっとツラくなり、ストップ。サウナで体を温めた。運動していないと、からだがふやけるのだ。

 今日は沖縄の今帰仁村で死体で発見されたジュゴンの解剖が行われることになっている。報道陣には非公開だが、終了後にブリーフィングがあるという。辺野古の埋め立てと死との直接の因果関係は認められないとか、いい加減な所見を出さないで欲しいものだ。

 あしたの参院選特集取材で、打ち合わせ。「サンデー毎日」記事の校正のあと、評判の映画『よこがお』をみる。こりゃあいいぞ。こういう邦画がもっと登場して欲しい。夏風邪に早く打ち克たなくては困るのだ。ワシントンDCと断続的に連絡していろいろと話し合う。

京アニ放火の現場に急遽転戦

燃える京都アニメーションの建物=2019年7月18日午前11時39分、京都市伏見区、朝日新聞社ヘリから20190718拡大燃える京都アニメーションの建物=2019年7月18日、朝日新聞社ヘリから

7月18日(木) 参院選の特集取材で、埼玉大学の松本正生教授にインタビュー。インターネットと選挙、および若年層の関心の薄さと保守化などをめぐって。ちょうどインタビューが終わったあたりで、SNS経由でいろいろな情報が堰を切ったように一気に入ってきた。京都のアニメ制作会社のビルに男が侵入、ガソリンのようなものをまいて火を放ったという。ビルが燃え上がり多数の逃げ遅れが出ているおそれがある、と。事態が時々刻々と動いている。参院選特集で、渋谷・雑踏で、最も言いたかった内容(テレビメディアの選挙報道についての自己批判)のリポートを撮ることになっていたが、打ち切りとなって、京都の放火事件現場に急遽転戦することになる。新幹線に飛び乗った段階で、死者1名、心肺停止12名、重傷者10名、中軽傷者15名という大惨事となっていた。情報がまだ混乱錯綜している。一体何があったのか。

 17時55分京都着、ただちに現場へ(あしたの彩の国さいたま芸術劇場の取材がむずかしくなった。N君に申し訳ない)。同道しているKディレクターは社会部記者から「報道特集」に転入してきたばかりで、社会部記者スピリットに目覚めたようだった。焼け焦げた京都アニメーションの3階建てのビルが目の前にみえる。断続的に雨が降っている。大勢の報道陣が押し寄せていた。そして僕らもそのなかの一部だ。

 発生から8時間たっていたが、できるだけの取材は試みた。まだビルの中にはおそらく遺体が残されたままだ。一体何があったのだろうか。なぜこのような陰惨な出来事が起きたのだろうか。意外なことに、放火犯とおぼしき男を(被害者だと思って)介抱した女性に話を聞くと、実に冷静に答えてくれた。現場周辺の何か所かから慌ただしい動きをリポートした。

 ある建物の屋上には報道陣が多数上っていて、建物を俯瞰できる位置からリポート・撮影・取材をしていた。報道陣が殺到するのはやむを得ない。だが最低限の規律とか慎みは保たなければならない。ましてやかなりの数の犠牲者が目の前の建物で亡くなられた直後なのだから。花を手向けに来た市民がいて、それを報道陣が取り囲んで撮影し、その後にマイクを突きつける。僕も部外者とは言えない。いつもの光景だが、今回ばかりは出来事の圧倒的な「陰惨さ」に戸惑う。

 中国のCCTVの王夢・東京支局長が中国向けの生放送をしていた。AFPの記者もいた。アニメはもはや世界で日本文化を象徴する分野となっているのだ。僕自身は京都アニメの作品はみていないが、熱狂的なファンが内外にいるという。こういう発生時には現場近辺の地どり取材が必須になるのだが、そこの質・量で取材結果に差がつくことが多い。テレビ朝日系の「報道ステーション」が、道路に倒れ込んでいる放火犯の写真をいち早く入手して放送していたのにはまいった。

 男は午前10時過ぎに京都アニメ第1スタジオの3階建てビルの玄関に侵入、「死ね!」と叫びながらガソリンのようなものをまいて、着火ライターで火を放ち自身も火傷を負いながら逃亡したようだ。火のまわりが早く、逃げ遅れた人が多数。放火犯の男を介抱した女性は、男が警察官らによって早い段階で放火犯と特定され、現場で尋問を受けていたことや、「パクりやがって」と怒声をあげていたこと、さらには警察官が男を3人がかりで現場近くまで抱えて行ったことなどを証言してくれた。

 夜遅くまで取材を続ける。夜10時までの段階で33人が死亡していたことが確認された。現場近くのビジネスホテルに投宿。着替えを持ってこなかった。コンビニで下着を買う。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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