藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
【20】ナショナリズム 日本とは何か/「悪役」は語る
この連載「ナショナリズム 日本とは何か」で前回までの隠岐編を書くため、島根県隠岐の島町の人たちとやり取りをしていて、ふと俳優の佐野史郎さんの名が出た。松江出身で歴史にこだわり、隠岐で幕末に起きた「隠岐騒動」に思い入れが強いというのだ。
インタビュー申し込むと快く応じていただいた。話は、この連載の核心へと迫っていった。
佐野さんを東京・南青山の所属事務所に訪ねたのは6月下旬。隠岐騒動の経緯をびっしりと書き込んだ手帳をめくりながら、質問に答え、語り続けた。
まず隠岐騒動についておさらいして、佐野さんとのやり取りを紹介したい。
明治維新直前の1868年3月、島根半島から日本海を北へ67キロの隠岐諸島「島後」(どうご・今の島根県隠岐の島町)で、隠岐騒動は起きた。
島民らは徳川幕府の天領だった隠岐を預かる松江藩の「郡代」を追い出し、80日間の自治をした。「1871年のパリ・コミューンより早い人民政府」「天皇の名の下に幕藩体制を拒み決起した維新の先駆け」などと、歴史通の間で様々に語られる事件だ。
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