花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
7月16日、ドイツのウルズラ・フォンデアライエン国防相が、欧州議会により次期欧州委員長に選出された。僅差だった。過半数374票を9票上回るだけの383票。フォンデアライエン氏はよほど安堵したのだろう、胸に手を当て、ホッと笑みを漏らす様子が報道で繰り返し紹介された。
実際、フォンデアライエン氏の選出には反対の向きが多かった。フォンデアライエン氏は欧州では無名、その存在を知る者はほとんどいない。何より、欧州議会会派の「筆頭候補」でない。筆頭候補とは欧州議会選挙の際、各党が欧州委員長候補として有権者に提示する人物のことであり、これにより有権者は、選挙を通し欧州委員長と欧州議会議員の双方を選ぶことができる。むろん、有権者は欧州委員長を直接選ぶわけではなく、そういう筆頭候補者を戴いた政党に投票するだけだが、それでも、欧州委員長の選出に間接的ながら民意が及ぶとの仕組みだ。
この仕組みが2014年に確立された。それを、今回、無視しようというのだ。筆頭候補でもない、ただ単に欧州理事会が合意しただけの人物を議会が承認、選出せよという。これではせっかくの「民意を反映した欧州委員長選び」が、再び密室の謀議に逆戻りだ。議会関係者の多くが反発した。その結果が、フォンデアライエン氏の僅差での勝利だ。これは、今後、同人がEUで活躍していくに際し陰に陽にマイナスに働くに違いない。
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