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月8万円の「ベーシックインカム年金」を目指して

支給方法、水準、財源……。私たちは年金抜本改革の議論を詳細に進めた

階猛 衆議院議員

「ベーシックインカム年金」とは

 6月19日に井坂信彦氏、井出庸生氏と私の3人で立ち上げた「年金抜本改革チーム」は、有識者の皆様からご意見を伺いつつ検討を重ね、「論座」で7月11日に「年金抜本改革のイメージ」を公表した。(『75歳からのベーシックインカム』)

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 これは「老後の貧困」を防ぐという観点から、公的年金の1階部分である「基礎年金」を、国民の保険料で支え合う共助型の「新たな基礎年金」と、国の資金で支えるべき人を支える公助型の「ベーシックインカム年金」に分けようというものだ。

 「新たな基礎年金」は、65歳から74歳までの10年間支給される。従来同様、満額で6万5千円だが、現役時代に払った保険料に応じて年金額に差がつく。年金だけで生計が成り立たない方々が増えないよう、「マクロ経済スライド」による年金の先細りを防ぐと共に、低年金や無年金の方々が収入を得るための選択肢を幅広く用意する必要がある。

 「ベーシックインカム年金」は75歳から生涯を終えるまで支給される。75歳になれば保険料を払っていなくても生活扶助と同等以上(月額8万円程度)の年金が平等に支給される。「老後の貧困」を防ぐ効果はあるが、今後この年代の方々の急増が見込まれるため、将来にわたり財源を確保する必要がある。

 一方、公的年金の2階部分である「厚生年金」は基本的に従来通りだ。ただし、従来の厚生年金と国民年金および基礎年金は別勘定であったが、保険料だけで運営し国費投入がない「新たな基礎年金」の下では、すべての勘定を一体化することが可能となる。「マクロ経済スライド」も厚生年金の勘定だけでなく一体化した勘定で実施するため、将来の年金削減のリスクが分散される。

 なお、75歳以上の高齢者を「ベーシックインカム年金」の支給対象とする理由について、①一般に75歳以上になると就労等による年金以外の収入を得にくく、「老後の貧困」リスクが高まること、②75歳未満にまで「ベーシックインカム年金」を支給すると、国の財政負担が重過ぎること、を前回挙げた。

 実際、60歳以上の方々に「一般的に支えられるべき高齢者とは何歳以上だと思うか」と聞いたところ、「60歳以上」または「65歳以上」という方は少なく、70歳より上の年齢を挙げた人が約8割。しかも、74歳までの回答者では「75歳以上」という回答が最も多いという調査結果もある(内閣府「令和元年度版高齢社会白書」)。75歳以上の高齢者は国費で「支えられるべき」とする私たちの発想は、国民感情とも合致している。

 こうした改革のイメージをたたき台として、前回お話を伺った国際医療福祉大学の稲垣誠一教授、法政大学の小黒一正教授、日本総研の西沢和彦主席研究員にお集まり頂き、以下の4項目を中心に、さらに踏み込んだ議論を行った。

(1)「ベーシックインカム年金」の支給方法と水準
(2)「ベーシックインカム年金」導入で必要となる財源
(3)「ベーシックインカム年金」で必要な財源を工面する方法
(4)年金勘定の一体化による将来の年金削減率の変化

拡大年金抜本改革チームの会合。奥の列が右から法政大学の小黒一正教授、日本総研の西沢和彦主席研究員、国際医療福祉大学の稲垣誠一教授。手前の列が政治家で右から井坂信彦氏、階猛氏、井出庸生氏=2019年7月29日、衆院議員会館の井出氏事務所


筆者

階猛

階猛(しな・たけし) 衆議院議員

衆議院議員(岩手1区)、盛岡一高野球部、東大野球部で投手。勤務先の長銀が経営破たん後、企業内弁護士として活動。2007年補選で初当選、以降小選挙区で5期連続当選。総務大臣政務官、民進党政調会長、国民民主党憲法調査会長などを歴任。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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