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月8万円の「ベーシックインカム年金」を目指して

支給方法、水準、財源……。私たちは年金抜本改革の議論を詳細に進めた

階猛 衆議院議員

(1)「ベーシックインカム年金」の支給方法と水準

 一人暮らしよりも夫婦など複数で暮らす場合の方が、一人当たりの生計費は一般的に少なくて済む。また、家賃負担がある場合よりもない場合の方が、生計費は少なくて済む。こうした世帯ごとの状況を勘案して支給額を変えることは、実質的な平等を図り国の財政負担を軽減するというメリットがある。

 一方で、こうした支給方法では生活保護と同じく支給額が複雑多岐にわたり、高齢者の手続負担や行政の事務負担が大きくなる。むしろ75歳以上の一人ひとりに対して国が平等に老後の安心を提供した上で、ゆとりのある方については税の負担等をお願いすればよいのではないか。

 このような見地から、家族構成によらず支給額は各人一律とし、持ち家のない世帯については空き家も活用した家賃負担の軽減策を強化すべき、という方向で議論を進めることになった。

 次に支給水準だが、75歳以上の一人暮らしの高齢者が生活保護を受ける場合の基準額が参考となる。平成31年4月現在、このような高齢者について日常生活に必要な費用として支払われる生活扶助の金額は、東京23区など最も高い地域で7万4470円、地方の郡部など最も低い地域で6万1520円だ。私の住む盛岡市など地方中核都市クラスで6万7570円である。

 私たちが当初想定していた月8万円、年100万円程度という支給水準は、生活保護との逆転を防ぐという見地から十分な支給額だと言える。ただし、有識者の皆さんからは月8万円では財源の調達が大変なので、引き下げるべきではないかとの指摘があり、必要な財源の規模を精査することとなった。

(2)「ベーシックインカム年金」導入で必要となる財源

 私たちの見立てでは、現在の75歳以上の高齢者全員に「ベーシックインカム年金」を支給する場合に必要となる国費は約17兆円。ただし、現行の基礎年金に投入されている国費12兆円は、新制度のもとでは不要となるため、これを「ベーシックインカム年金」に投入することで残り約5兆円を調達すればよいことになる。まずは、この見立てが正しいかどうか精査する必要がある。

 さらに、将来必要となる財源も考えなくてはならない。「団塊の世代」が今後75歳以上になり、平均寿命も次第に伸びている。直近の推計では、出生数も死亡数も想定範囲の中位レベルで推移した場合、75歳以上の人口は2054年まで増え続ける。実数でいうと現在の約1800万人が約2400万人まで33%も増加する(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」)。調達が必要な金額も当然増えるはずだ。75歳以上の人口がほぼピークを迎える2050年に必要となる財源を考えたい。

 この2点に関し、「ベーシックインカム年金」を月額8万円で実施する場合と月額7万円で実施する場合とに分け、それぞれ将来にわたって必要となる財源の規模と、そこから現行の基礎年金制度の下で予定される国庫負担分を差し引いた金額(追加財源)の規模を、稲垣教授に試算して頂いた。

 試算に用いたデータは、公的年金にかかる平成26年の「財政検証」と「日本の将来推計人口(平成24年推計)」である。なお、将来の財源額は、現在との比較を容易にするために平成26年の価値に換算している点にご注意願いたい。

拡大

 まず、私たちの当初の案である月額8万円のケースでみると、「ベーシックインカム」の支給総額は直近の17.9兆円が2050年には22.9兆円に増加し、追加財源額は6.3兆円から14.2兆円まで約2.3倍の増加となる。これに対し、月額7万円のケースでは支給総額は15.6兆円が20.0兆円に増加し、追加財源額は4.0兆円から11.3兆円まで約2.8倍の増加となる。

 追加財源額が2050年にかけて急増する試算結果となったのは、75歳以上の人口が増えることだけが原因ではない。稲垣教授は、従来の基礎年金では必要財源の2分の1が国庫負担となっていたため、年金抜本改革後に従来の基礎年金を廃止した後は、従来想定されていた国庫負担分を「ベーシックインカム年金」の財源に回し、なお不足する分を追加財源額と考えて試算を行った。

 そうすると、従来の基礎年金はマクロ経済スライドにより今後どんどん先細りするため、将来になればなるほど、国庫負担額(平成26年価値に換算後)も減少する。この国庫負担額の減少が響き、2050年の追加財源の必要額は約3兆円も上振れすることになった。

 ただし、この3兆円を追加で必要な財源と考えるのか、それともこの3兆円はマクロ経済スライドの反射的作用で国庫負担が減少するに過ぎず、本来的に国が負担すべきものとして追加必要財源から除いて考えるのかは、議論の余地があるだろう。なぜなら、年金制度の国庫負担をマクロ経済スライドで3兆円減らしても、貧困高齢者が激増して生活保護制度の国庫負担が増えるだけだからである。

 以下では、稲垣教授の試算に則り、かつ「ベーシックインカム年金」を月額8万円とする前提に立って、追加で必要となる財源をいかにして工面するかを考える。

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筆者

階猛

階猛(しな・たけし) 衆議院議員

衆議院議員(岩手1区)、盛岡一高野球部、東大野球部で投手。勤務先の長銀が経営破たん後、企業内弁護士として活動。2007年補選で初当選、以降小選挙区で5期連続当選。総務大臣政務官、民進党政調会長、国民民主党憲法調査会長などを歴任。

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