市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員
1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「韓国敵視政策」が招いた不寛容な集団抗議/権力側はブレーキかけず「放置」
愛知県の国際芸術祭企画展「表現の不自由展・その後」が開催3日間で中止に追い込まれたことを伝える2019年8月3日のニュースを見ながら、「韓国を敵視する政策がこんな形で表れてしまったか」と深いため息をつくしかなかった。
安倍政権が韓国を輸出手続きの優遇国「ホワイト国」から外した措置を受けて、私は『韓国は「敵」なのか』のなかでこう書いた。
今回の措置は、戦後の日韓史上例がない、「日本が悪意をもって韓国を標的として能動的に決断した行為」であるのが最大の特徴だ…(中略)…この(日韓)両者は、まったく折り合わない、会話のかみ合わない、相手の立場を理解できない、理解しようともしない、いつ終わるとも分からない闘いに突入してしまった。
慰安婦をシンボル的に表現した少女像に対して、それをあえて展示して議論の呼び水にしようとした主催者側に対して、「相手の立場を理解できない、理解しようともしない」抗議や脅迫は容赦なく攻撃し、その嵐に展示会全体がのみ込まれてしまった。
ネットの功罪をくまなく知り、SNSの世界をリードしてきたジャーナリスト・津田大介氏(今回の芸術監督)ですら「想定を超える事態が起こった」と記者会見で涙するほど脅迫・抗議の風圧は激しかったのだろう。
芸術祭実行委員会会長の大村秀章・愛知県知事も「テロ予告や脅迫の電話がこれ以上エスカレートすると(来場者が)安心して楽しくご覧になることが難しい」と語り、単なる抗議以上の、現実的な危険の兆候が中止の最大の理由であることを明らかにしている。
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