アメリカ「Z世代」に「日本シフト」が起きている
過労死、子供の貧困、女性、在日外国人、LGBTQなどマイノリティー問題に関心
芦澤久仁子 アメリカン大学講師(国際関係論)及びジャパンプログラムコーディネーター

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日本への関心が戻ってきた!
アメリカの大学の夏は長い。日本と違って新しい年度が9月に始まることもあり、学生達の夏休みは2カ月半余り。その期間、彼らはインターンシップやアルバイト、旅行やボランティア活動など、それぞれの形で過ごしている。
一方の我々教える側は、多少のんびり出来ると思いきや、学期中にはなかなか集中出来ない論文書きやリサーチ作業などに追われるのが常である。そんな中、最近のアメリカ大学生の動向をちょっとご紹介したい。
というのも、これまで尻下がり傾向が続いたアメリカの学生達の日本に対する関心が戻ってきたかも、と思われる現象があったのだ。
日本コースが二つも開講
ことの始まりは去年の秋のこと。9月からの秋学期が始まって間もない頃に、私の教える大学の国際関係論のプログラムとアジアン・スタディーのプログラムのそれぞれの担当ディレクターから、「来学期に日本についてのコース(科目)を担当してほしい」と頼まれたのだ。
どちらのプログラムでも新規のコース設置だったので、つまり春学期(1月から5月)に、日本関係の授業が突如二つも増えることになったのだ。
アメリカの日本関係者にとって、これは注目に値する。なぜなら、アメリカの大学における日本関連のコースは、この15年ほど、全般的な減少傾向にあったからだ。その主な理由は、90年代後半以降の日本経済停滞と中国の劇的な台頭によって、アジア地域および国際政治全般における日本の存在感が相対的に薄くなり、結果、学生達の日本に対する関心が減少した、と考えられている。
実際、ハーバード大などの超メジャー大学は別として、私が教えているアメリカン大学(ワシントンDC)のような中規模大学では、日本に特化したコースだと十分な数の履修学生が集まらないという事態が続いたため、日米中の3カ国間関係や日韓2国を比較する形式にしてコースを成立させてきた。
ところが、ここにきて日本の政治・社会を単独で教えるコースが、急きょ必要となったのだ。もちろん、これは日本外交が研究テーマの一つである私としても嬉しい展開で、先学期は二つの新規コースを抱えて随分忙しかった。
日本留学の学位プログラムに300人近くが応募
上記の二つの日本関連コースのうちの一つは、アメリカン大学が日本のある大学と共同学位プログラム(ジョイント・ディグリー)を昨年度から始めため、その一環で新設されたものである。

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この学位プログラムに入った学生達は、アメリカと日本にそれぞれ2年間ずつ滞在し、学位(グローバル・スタディー)を取ることになる。例えばアメリカン大学の学生の場合は、最初の1年をワシントンDCのキャンパスで勉強し、次の2年間は日本のパートナー大学で過ごし、最後の1年間はまたワシントンDCに戻って卒業を目指す、という段取りである。
プログラム開始にあたって、最初の学年のアメリカン大学側の学生枠が5人、日本側の学生15人の、合計で20人という小規模プログラムでスタートすることにしていた。アメリカ人学生の枠数が少なかったのは、上述の日本への関心低下傾向があっため、この日米共同学位という新しい試みにアメリカ人の学生が十分集まるのかどうか、アメリカン大学側が不安だったためである。
ところが募集をいざ始めたところ、応募してきたアメリカ人高校生は、5人の枠に対してなんと300人近く。アメリカン大学にとっては予想外の嬉しい悲鳴の事態となり、当初の枠数を増やして12人を受け入れることにしたのである。
ちなみに日本側の募集はあまり芳しくなく、結局、最初の学年は4人だけ。これは、アメリカでの2年間の勉強を無事にこなすために、英語能力の基準が高めに設定されていたせいのようだが、加えて最近よく指摘されている日本人学生の内向き傾向も影響していると思われる。