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アメリカ「Z世代」に「日本シフト」が起きている

過労死、子供の貧困、女性、在日外国人、LGBTQなどマイノリティー問題に関心

芦澤久仁子 アメリカン大学講師(国際関係論)及びジャパンプログラムコーディネーター

中国への関心冷え込みの反動か

 そんなわけで、アメリカ人学生の間で日本に対する関心が戻って来たようなのだが、一体どうしてなのだろうか?

 大学関係者達に聞くと、学生達の中国への関心が最近冷え込み傾向にあり、その反動ではないか、との声が多い。つまり、もともとアジアに興味のある学生達の一部が、これまで流行(はや)りだった中国から日本にシフトした、との見方である。

 私の大学の交換留学プログラムの担当者の見方も同様で、中国への留学希望が最近減少し、逆に日本、そして韓国への留学希望が増加している、と言う。

 実際、全国的な統計を見ると、中国留学の減少傾向は数年前から始まっている。

 米国国際教育研究所のアメリカ人学生の留学先のデータによると、中国に留学するアメリカ人学生は1990年代の終わりから如実に増加し(2003年は前年比でなんと90パーセント増)、留学先ランキングで1998年に12位だった中国は、2005年には5番目に人気の留学先となった。

 ところが、2012年を境にその増加は止まり、以降、毎年平均で5パーセント以上の減少となっている。また、アメリカの大学で中国語を勉強する学生数の減少も、一部の大学で報告されている

増加する中国への否定的な見方

拡大hxdbzxy/shutterstock.com
 では、何故、中国への関心がここに来て減少し始めたのか?

 関係者達は、中国への否定的な見方がアメリカ人全般の間で増えてきたため、と見る。例えば、ピューリサーチの世論調査によると、2006年から2016年の10年間で、中国のことを「深刻な問題」もしくは「敵対国」とするアメリカ人が、全回答者の約45パーセントから66パーセントと20パーセント以上増加している。

 中国共産党主導の政治状況や緊張が高まる米中関係、さらには中国国内の環境汚染問題が報道されるに従って、中国への留学を懸念する考え方が学生達のみならず、彼らの親達の間で、広まってきているようだ。

 まだ18歳、19歳の子供達である。親に「中国はやめておいたほうが良い」と言われれば、「じゃあ、その代わりに日本にしようか」ということも少なからずあるのだろう。そして、「日本については、ポケモンや任天堂のゲームなどで小さい頃から何となく知っているから選びやすかった」と、前述の新設共同学位プログラムに参加した学生が一様に言っていた。

 この中国専攻の学生の減少は、最近のトランプ政権の敵対的な対中政策によって、さらに進むことが予想される。

 実際、トランプ政権は今年の6月から、ロボット工学や航空工学といった分野で勉強しようとする中国人学生に対する学生ビザを制限し始めている。中国側がアメリカ人学生に対して似たような措置をとる可能性も今後あるだろう。

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筆者

芦澤久仁子

芦澤久仁子(あしざわ・くにこ) アメリカン大学講師(国際関係論)及びジャパンプログラムコーディネーター

ワシントンDC在住。東京生まれ。慶応大学経済学部卒業。テレビ東京勤務後(ニュース番組制作等担当)渡米。2005年にタフツ大学フレッチャー法律外交大学院博士課程(国際関係論)を終了し、英国オックスフォードブルックス大学(准教授)を経て2012年から現職。また、米国ウッドローウイルソン国際学術センター、東西センター、ライシャワー東アジア研究所に招聘研究員として滞在。主な研究分野は日本外交、日米関係、アジア地域機構、グローバルガバナンス。研究論文は、International Studies Review, Pacific Review, Journal of Peacebuilding and Development等の英文学術誌および編著本に多数発表。著書、Japan, the U.S. and Regional Institution-Building in the New Asia: When Identity Matter (Palgrave McMillan)が、2015年度大平正芳記念賞を受賞。

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