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メルケル首相の14年にみるドイツと欧州の関係

花田吉隆 元防衛大学校教授

「筋肉質」の経済とユーロが強力な武器

 一つは、前任のシュレーダー首相が実施した「アジェンダ2010」がようやく成果を見せ始めると共に、ドイツ経済のスリム化が進行、経済が「筋肉質」に生まれ変わったことだ。「アジェンダ2010」とは、簡単にいえば、労働市場に競争原理を導入する構造改革だ。その成果が、メルケル氏が首相に就任したころになってようやく現れ出した。

 もう一つはユーロだ。1999年、各国は統一通貨ユーロを導入したが、これは強いドイツ・マルクも、弱いイタリア・リラも同じユーロになるということだ。当然、マルクはユーロの下で切り下げになるし、リラは逆に切り上げになる。以後、マルク安のドイツは輸出ブームを謳歌した。

 かくて、「筋肉質」とユーロという二つの強力な武器を手にしたドイツは、見る見るうちに欧州の経済大国に復活していく。それまで、再統一後の「巨体」を持て余していたドイツが、とうとう体格に見合った「体力」を持つに至ったのだ。

 2008年、リーマン・ショックに襲われる前の時点では、欧州メディアは強いドイツを目の当たりにし、これからドイツは強力なリーダーシップを発揮していくに違いないと見た。「メルケル氏は、戦後生まれの初めての首相だ。過去に縛られることなく、強い指導力を発揮していくだろう」と期待していた。

 しかし、そういうメディアの期待は見事に裏切られる。リーマン・ショックの激震を受けユーロが大きく揺らいだ時、メルケル首相が果敢な指導力を発揮することはなかった。

 メルケル首相はひたすら低姿勢に徹し、自ら進んで指導力を発揮するというより、コンセンサスが出来上がるまでじっと状況を見守った。その意味ではメルケル首相は過去のドイツの首相と同じだった。戦後生まれでありながら、なお、ドイツの過去に縛られているかのようだった。

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

1953年生まれ。在スイス大使館公使、在フランクフルト総領事、在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、現在、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」(創成社)「スイスが問う明日の日本」(刀水書房)等。

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