三輪さち子(みわ・さちこ) 朝日新聞記者
2006年、朝日新聞社に入る。横浜、徳島総局を経て2011年から政治部。民主党政権では事業仕分け、自民党政権では自民党幹事長番、防衛省などを担当。2017年から世論調査部。オピニオン編集部を兼務。関心のあるテーマは虐待・貧困などの「子どもをめぐる問題と政治」。趣味はカバン作り。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「政治家の妻」の期待を裏切って/進次郎クリステル結婚に願う
小泉進次郎氏と、フリーアナウンサーの滝川クリステルさんが結婚を発表した。
この結婚には、祝福と嫉妬とで様々な評価が渦巻いているし、首相官邸で発表するスタイルの是非も問われるべきだろう。
私には、進次郎氏を取材した政治記者として、そして同世代の女性として、二人に期待したいことがある。「政治家の妻」としての周囲からの期待を大いに裏切ってほしいのだ。
4年ほど前のことだが、進次郎氏が自分の結婚観について、話してくれたことがある。記事に書かれることを前提に話したわけではないが、ずいぶん前のことでもあるし、今回、書くことを許してくれると思う。
そのとき彼は「家庭には政治を持ち込みたくないんだ」と語った。家に帰って妻と政治の話をしたり、妻を政治に巻き込んだりはしたくない、という話だった。強い記憶として今でも残っている。
当時は「それも一つの理想かもしれないな」としか思わなかったが、今、こうして妻となる人が具体的に現れると、改めて、どんな家庭になるのだろうかと考えた。
8月7日夜の横須賀市で、報道陣を前に進次郎氏はこう語った。
「私の選挙に妻が出てくることはない」
「政治家の奥さんは大変という、世の中の見方を変えないと、『政治家に(なりたい)』という人も出てこない」
「政治家の妻という前に、滝川クリステルさんという一個人としての幸せがあればいい」
政治家の妻といえば、週末だけ選挙区に帰ってくる夫の代わりに、地元での様々な政治活動を期待されるのが一般的だ。夫の代わりに会合に顔を出す。時には、何かを頼まれることもあるだろう。
選挙となれば、走り回って頭を下げ、マイクを持って人前で演説をする。選挙中に政治家事務所に行けば、「本人の票は何票。奥さんの人気票で何票」と、冗談とも本気ともつかない話を聞かされることもしばしばだった。
妻は、政治家である夫を支えて当然、というのが、政治家本人、あるいはその支援者の間に根強く残っているのが政治の世界だ。進次郎氏は政治家として恵まれた環境にいるからこそ、他に先駆けて、新しい「政治家の妻」の姿を示すことができるはずだ。