三輪さち子(みわ・さちこ) 朝日新聞記者
2006年、朝日新聞社に入る。横浜、徳島総局を経て2011年から政治部。民主党政権では事業仕分け、自民党政権では自民党幹事長番、防衛省などを担当。2017年から世論調査部。オピニオン編集部を兼務。関心のあるテーマは虐待・貧困などの「子どもをめぐる問題と政治」。趣味はカバン作り。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「政治家の妻」の期待を裏切って/進次郎クリステル結婚に願う
進次郎氏には普通の政治家以上に、「家庭に政治は持ち込みたくない」と思う理由があったのだろうと思う。それは彼が育った家庭にあると私は考えている。
進次郎氏が幼い時、父である純一郎氏は離婚し、彼は父の元で育てられた。
進次郎氏の母親であり、純一郎氏の元妻である、宮本佳代子さんが、2016年11月、女性ファッション誌「precious」で自身の人生について語っている。
宮本さんは、22歳で小泉家に嫁いだ後、長男で俳優の孝太郎氏、次男の進次郎氏を出産。3人目を妊娠中に離婚した。
当時27歳。シングルマザーとして、働きながら男の子一人を育てた。三男がまだ5、6歳の頃に、純一郎氏の選挙ポスターを見つけ、「これがパパよ」と言ってポスターと一緒に息子の写真を撮ったエピソードなども紹介されている。
今よりもシングルマザーへの風当たりが強い時代に、子どもを抱えて必死に働いてきた生き方は、女性の共感を呼ぶのだろう。連載はそれから2017年10月まで続いた。
離婚の理由については、「代々政治家の家に嫁ぎましたから、一般の家庭に嫁いだのとは少し訳が違いました。そして、別れざるを得ない宿命と運命があったのだと思っています」と触れるのみだ。
政治一家という特異な事情の中で、母親と離れて育った進次郎氏。「家庭に政治を持ち込みたくない」という感覚は、自分の生い立ちも影響しているのだろう。
インタビューに応じる2人の様子をテレビ画面で見ながら、私は、従来のような「政治家の妻」像を打ち破ってほしいと強く願った。
フリーアナウンサーが特別だとは思わない。進次郎氏が特別な政治家だとも思わない。誰であろうと、どんな仕事であろうと、夫も、妻も、それぞれの生き方を生きてほしい。
周回遅れの政治を変えてほしい。私は心からそう願う。
滝川さんは「形にとらわれない、自分のスタイル」でいきたいと語っている。
よもや、選挙中にマイクを握ったり、当選後のバンザイでは隣で頭を下げたりといった、「政治家の妻」を演じることはないと思いたい。ましてや、公人と私人の境を曖昧にしながら、怪しい陳情を受けるようなマネだけは絶対にやめてほしい。
女性の2人に1人が働く時代だ。夫の仕事を陰で支える妻が理想とされるような政治の世界は、社会から取り残される一方だ。