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選挙を盛り下げる「公選法」はいつまで続く/下

制約だらけで歪んだ制度の是正が必要だ

井戸まさえ ジャーナリスト、元衆議院議員


拡大NHKから国民を守る党の立花孝志代表=2019年7月22日

SNSでも「ドブ板選挙」

 選挙の候補者を決めるときに各政党の担当者がツイッター等の「フォロワー数」を気にして見るようになったのはいつ頃からだろうか。

 インターネット選挙が行われたのは2013年の参議院選挙。2014年の衆議院選挙ではネットを使って発信を行う候補者はそう多くなかったと思う。2016年の参議院選挙を経て6年後の今年は位相が違った。SNSの活用は「選択科目」から「必修科目」となり、当落の決め手とさえなり得るほどに大きな武器になることが証明されたともいえよう。

 れいわ新選組もN国党も、ネットでの配信がなければその存在が届く範囲は限定的だっただろう。youtubeでいつでもどこでも繰り返し演説や政見放送等が見られるからこそ「拡散」し、具体的な投票行動につながったのだ。

 もちろん参議院選挙中にもSNSをどう使うか、各陣営ともに「正解」を持っていたわけではないと思う。SNSは告知ツールとして重要な役目を果たす一方で、途中で予定が変更された場合、これまでであれば陣営の都合だけで動くことができたが、変更告知を行わないと有権者を待たせたままになる。実際、「行ったのに誰もいなかった」という苦情は少なくなく、便利な一方でそのフォローに手間がかかるようになっている。

 SNSは有権者との双方向コミュニケーションツールだ。だからこそ、書き込みは励ましばかりではなく、批判もくる。ときには悪意に満ちた言葉もある。しかしそういうときにどう返すのか。スルーするか、切り返すかというのも、実は有権者は静かにスマホの画面を見てチェックしているのである。

 この選挙では「ネットドブ板選挙」という言葉をあちこちで聞いた。「ドブ板選挙」とは、候補者が各戸を一軒一軒ドブ板を渡りながら回ったことから名がついた選挙戦術である。ありとあらゆる会合に顔を出し、飲みたくない酒も飲んで握手をし、名刺を渡し、徹底的に有権者と触れ合うのである。ネットにもドブ板選挙的戦術をとる候補者たちが出てきたのである。

 ただ、SNSを選挙で活用しようとしたならば、相当なマメさが大事となる。当然だが、候補者は街頭で演説していることが多いので、SNSの発信は時間的に難しい。しかし、朝食の合間やちょっとした休憩時間を使ってこまめに返信していると、そこからリツイートされ多くの人の目に触れるようになる等、効果は確かにあるとも感じた。

 認められたインターネット選挙ではメールに比してSNSは各内容や発信先等を気にすることはないため、かなり楽とは言え、レスポンスが瞬時につき、そのやり取りを第三者が眺めると言う図式は、ある意味止まった媒体であるビラ等よりも良しにつけ悪しきにつけ爆発力がある。

 ただ「時間」が限られていると言うことは、言葉足らずや誤解もあり、候補者自身の発信が思わぬ炎上を生むこともある。関東圏のある候補者は、facebookは本人発信が禁止され、本人に成り代わったスタッフが発信を続けた。Twitterについては選対幹部が内容をチェックし、許可を得なければ流さないと言った状況となったと言う。本人アカウントで発信する場合、「スタッフより」と明示する場合もあるが、そうでない場合もある。書き手は候補者本人と会話していると思い込んでいるので、どこか滑稽な感じもしないではない。

 党が出している政策内容より踏み込んで「消費税ゼロ」を言った立憲民主党の石垣のりこ候補者(宮城選挙区)は、党の支持者内での炎上を招いたがそれを押し通して勝利した。一般論になるが、炎上したことで知名度が格段に上がることは決して選挙にマイナスではないだろう。

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筆者

井戸まさえ

井戸まさえ(いど・まさえ) ジャーナリスト、元衆議院議員

1965年宮城県生まれ。ジャーナリスト。東京女子大学大学院博士後期課程在籍。 東洋経済新報社勤務を経て2005年より兵庫県議会議員。2009年、民主党から衆議院議員に初当選(当選1回)。著書に『無戸籍の日本人』『日本の無戸籍者』『 ドキュメント 候補者たちの闘争』、佐藤優との共著『不安な未来を生き抜く最強の子育て』など。