日韓問題の核心は“文在寅大統領問題”
ちらつく“悪しきリベラリスト”の影。国内問題を国際問題化する政治手法にも危うさ
田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授
文大統領は悪しきリベラリスト?
私は文氏が大統領に就任した時、彼の活躍によってより自由でより民主的な韓国が生まれることを期待した一人である。それは彼が長年にわたって掲げてきた、「市民」「人権」「平和」などの旗印のせいでもある。
とはいえ、公然と彼を評価しなかったのは、“悪しきリベラリスト”ではないかという疑念がどうしても消えなかったからだ。たとえて言えば、日本の民主党政権幹部に抱いたのと同様の不安を、文大統領に対して抱いていたのである。
文大統領は決して日本を嫌いなのではないだろう。むしろ逆かもしれない。そうでなければ、娘さんを日本の大学に留学などさせないし、奥さんの茶道にも理解を示さないだろう。結局、文大統領は「反日」姿勢によって、自分の政治的立場を強めようとしているだけではないか?
韓国では、来年2月に総選挙が予定されている。この総選挙は文大統領にとってはもちろん、与党「共に民主党」にとっても死活的に重要な政治決戦である。この選挙で憎き保守派の野党を叩(たた)きのめし、二度と立ち上がれないようにしなくてはならない。そのために、彼は夜も眠れないほど追いつめられているのだろう。
しかし、現在のようにいたずらに「反日」姿勢を強めることは、逆に文大統領を弱体化させるのではないか。本当の事情が理解されるに従って、頼みの国際世論の潮目が大きく変わり、文政権は窮地に追い込まれるだろう。それはもう始まっている。
似非(えせ)リベラリスト、悪しきリベラリストは、人権、市民、平和、福祉など、誰も反対できない旗を高く掲げながら、自己の権勢欲を満たすことを最優先にして動く人のことである。
文大統領には、そんな似非リベラリストの兆候が表れているように見える。
「陽」の盧武鉉氏、「陰」の文在寅氏

盧武鉉大統領(右)と文在寅氏=文在寅陣営提供
かつて文氏は盧武鉉大統領と政治的に一体で、盧氏が「陽」ならば文氏は「陰」という印象だった。
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