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[148]同じ坑道でつながっている思い

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

7月23日(火) 午前中「報道特集」の定例会議。会議後に某氏との会食。テレビ業界の話で、吉本興業とジャニーズ喜多川氏の死去で、テレビの仕事の仕方に大きな変化がやってくるとの考えは甘いぞと。その後のものごとの進み具合をみていて本当にそう思う。

 知人の境遇でいくつかの変化の知らせが届く。一人はNYのコロンビア大学東アジア研究所にいたNさん。富山の銀行へ。もうひとりはY君。新聞業界に見切りをつけたようだ。まだ若いので、可能性が開かれている。夕刻より、気のおけない仲間と飲食。忌憚のない意見を言い合う。飲み過ぎた。何やってんだか。

7月24日(水) 「週刊現代」のコラム原稿。京都アニメーション放火殺人事件の背後にみられる「陰惨さ」と時代閉塞について。午後2時から「報道特集」の終戦企画のひとつで、福田康夫元首相にインタビュー。疎開先の群馬での戦争体験にはじまり、歴史史料保存の大切さ。歴史から何を学ぶか。さらに戦争をしないための外交の裏話などを聴く。なかなか隙をみせない人物である。けれども、現首相と比べるのも失礼かもしれないが、この人物にはどこか人間としての品位・教養がある。そして外国の知見に対しても聞く耳を持つ謙虚さがあるように感じられた。お会いできてよかった。

 先日、名古屋で再会した「報道特集」の元ADのM君が上京して局を訪ねてきているという。一緒にお茶を飲んで話をする。ストレス解消と体調を戻すために、夜、時間としては普通ではないが、午後8時からプールに行き、泳ぐ。こんな時間にプールに来ている人は、本格的なスイマーが多くて、ひたすら黙々と泳いでいた。僕はいつもは朝泳いでいるが、プールで泳いでいる「人種」が全く違っていることに驚く。平均年齢が15歳くらい違うかな。

7月25日(木) 朝、何気なくテレビをみていたら、テレ朝の「モーニングショー」に、山本太郎が生出演していた。「そもそも総研」。そりゃそうだよな。今最も熱い人物だものなあ。こういう感覚がないテレビマンはよほど鈍感か、臆病な輩だと思う。でもやっぱり投票前になぜできなかったかが問題なのだ。自戒を込めて。事後にしかやれないことへの言い訳はテレビ側からは聞かれなかった。

元広島市長の平岡敬さん元広島市長の平岡敬さん

 午前中の便で広島へ。放影研関連の取材。14時から元広島市長の平岡敬さんとお話をする。つくづく思うのだが、平岡さんからは確固たるジャーナリスト魂がにじみ出ている。さすがに中国新聞や中国放送にいらした方だ。ジャーナリストとしても今なおとても尊敬できる方だ。その後、場所を移動して旧知のS大兄、Mさんらと会食。夜遅くに帰京。

参院選挙で生まれた希望

7月26日(金) あの相模原事件の発生から今日で3年になる。朝、プールに行き泳ぐ。いつもの半分くらい泳ぐ。「琉球新報」の書評欄に松岡哲平さんの『沖縄と核』について原稿を書く。ちょっと遅すぎる。新聞社の書評欄の未来は大丈夫か。

さいたまネクスト・シアターの『朝のライラック』さいたまネクスト・シアター『朝のライラック』=彩の国さいたま芸術劇場のサイトより
 夕刻、さいたまネクスト・シアターの『朝のライラック』をみる。期待が大きかったので、若干厳しい見方になるのかもしれないが、IS=イスラム国の西欧文化への強烈な憎悪に対置できるだけの、主人公の教師夫妻の普遍的な価値、魅力のありようが弱いのではないか。けれども、蜷川幸雄さんの思いを継ぐ「世界最前線の演劇」シリーズの試みは、日本においては実に貴重なものだ。ポスト・トークで埼玉県川口市のクルド人コミュニティをめぐる話に興味を抱いた。シリアのクルド人支配地区で会った人たちは、今、どうしているのだろうか。IS掃討作戦でさんざん利用され、その後はトルコに自分たちが攻撃される立場にある彼らの運命を思うと、本当にやり切れない思いがする。

7月27日(土) 「報道特集」のオンエア。2本の特集が結果的に実にタイムリーで、とりわけ、RKB毎日放送・小松記者制作の、重度障がい者の女性の就職までを追った特集は、折から参議院選挙で、れいわ新選組から当選した2人の障害者の議員の介助問題ともつながっていて、さまざまなことを考えさせられた。共に生きることの現実と希望。

 番組冒頭の挨拶で

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