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米富豪の性的虐待事件に怯えるフランスの人たち

パリと浅からぬ関係の故エプスタイン被告。フランス人共犯者ありとメディアも報じ……

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

フランス人の“共犯者”も判明

 エプスタインはこのパリの豪華マンションやニューヨーク・マンハッタンの豪邸、マイアミの別荘などで未成年の少女たちに性的虐待を繰り返していたほか、売春目的の“マッサージ嬢”と称する少女たちを知人らに提供していたことも判明している。

拡大Sergii Rudiuk/shutterstock.com
 さらに、すっぱ抜きで知られるフランスの左派系ニュースサイト「メディアパルト」をはじめ、複数の仏メディアが、エプスタインにフランス人の“共犯者”がいたことを報じた。

 エプスタインの「フランス人の友人」として知られるジャンリュック・ブリュネルだ。ブリュネルは1978年にパリでモデルの斡旋(あっせん)事務所を創立し、マイアミにも支部を設立。80年代から90年代にかけて、国際的なモデル事務所として、業界を牛耳っていた。

 マイアミの事務所設立の資金はエプスタインが援助したといわれる。ブリュネルはパリから少女たちを「モデル」のビザで渡米させ、エプスタインや彼の友人、知人たちに提供していた。少女たちは、憧れのモデルの仕事と引き換えに、「性の奴隷」になっていたわけだ。

「#Me Too」を経て証言が続々

 「#Me Too」が世界の注目を集めるまで、この種のセクハラ、パワハラ事件の犠牲者は「泣き寝入り」状態に置かれていた。「危険にさらされている無邪気な者たちの会」によると、犠牲者の少女たちもこの数年、積極的に証言をし始めているという。オランダや北欧から、モードの本場パリでのモデルを夢見てブリュネルの事務所に登録し、仕事と引き換えにブリュネルにレイプされた時の具体的な状況などの証言もある。

 現在、40、50歳の元モデルらには、「エプスタインは10代のか弱い少女がお気にいり。20歳以上は興味なし」などの証言もある。

 エプスタインは2008年にフロリダで「少女たちに対する性的犯罪」で13カ月の実刑判決を受けた。以後、彼の名前は再犯が多い「性的犯罪者」のリストに登録されていた。

 この時、JPモルガン・チェース銀行は、彼の口座を閉鎖するつもりだったが、2013年まで閉鎖しなかった。ニューヨーク・タイムズによると、銀行の重役の一人が「この優良顧客は、多数の優良顧客も紹介してくれるので、大事にするべきだ」と擁護したからだという。この重役とエプスタインとの関係が気になるところだ。

 この時は、“秘密取引”に応じた担当検事のお陰で、通常は長期禁固刑になるところを、この種の犯罪としては異例の13カ月という短期の刑になったといわれる。連邦捜査局(FBI)の捜査も免れ、ニューヨークなどでの犯罪や交友関係も明らかにされなった。この時の検事がトランプ政権のアレキサンダー・アコスタ労働長官で、エプスタインが逮捕された後の7月19日に辞任した。今回は、45年の有罪判決が予測されていたので、長期の刑務所生活には耐えられないと悲観して自殺した、との指摘もある。

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト

元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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