来栖宏二(くるす・こうじ) アゼリーグループ 社会福祉法人江寿会理事長、医学博士
1992年日本医科大学卒業。1999年特別養護老人ホームアゼリー江戸川開設。翌年新小岩平成クリニック開院。現在関東圏に多数の介護施設、保育施設等を運営している。また介護海外人材マネジメントについて講演・コンサルティングを行っている。 一般社団法人自立支援介護・パワーリハ学会理事 国立長寿医療センター客員研究員
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
2025年、2035年の超介護人材不足。持続可能な社会保障制度を維持できるか?
介護現場では、人手不足が深刻です。高齢者人口が増える一方、支えては減っていく時代です。東京都江戸川区で介護、保育、医療を一体で提供する地域密着型のサービスを提供している「アゼリーグループ」では、外国人を積極的に雇用しています。外国出身者も日本人同様に管理職へ昇進し、国内産業と見られていた業界が、国際的な業界へと変貌しているといいます。代表の来栖宏二さんに、2回(前編、後編)に分けてリポートしてもらいます。(「論座」編集部)
住民基本台帳に基づく日本の2019年1月1日時点の人口動態が総務省より公表された。日本人の人口は、1億2477万6364人で、10年連続で減少し、今年は過去最大の減少幅で、その数は43万人だった。
生産年齢人口(15~64歳)は7423万人で、前年から61万人減少し、この減少による人手不足は統計にも顕著に表れている。
日本全体での人手不足を、外国人人材により少しでも補っていこうという傾向により、外国人雇用が増加している。それを示すように、外国人の人口は16万人増加の266万人で、その内訳は85%が生産年齢人口の226万人だ。この傾向はますます顕著になっていくことは容易に想像ができる。
人口動態の変化によって社会構造も変化してきており、介護についても家族介護から「介護の社会化」の旗印のもと2000年に介護保険制度が創設された。制度が始まった当初より団塊の世代の動向が介護政策の中心だった。
2025年はまさに団塊の世代が後期高齢者、つまり75歳を迎える年であり、厚生労働省の2015年の推測では約37万人の介護人材が不足するといわれている。
しかし、過去20年間の介護保険制度での統計によると、75歳に至っても介護保険でサービスを受ける割合は約13%と言われている。つまりほぼ9割近い後期高齢者は、まだ介護が必要ではないのである。それでも約37万人が不足しているのである。
では10年後の2035年の介護人材不足問題はどうなるのであろうか。
統計によると、85歳以上になると約6割の老人に介護が必要となる。つまり団塊の世代が85歳になる2035年には、経済産業省の2018年の推計によると約79万人の介護人材が不足すると見られている。今後、介護の担い手である生産年齢人口が減少する日本で、介護問題だけでも果たして「持続可能な社会保障制度」を維持できるのだろうか。
介護業界はほとんどが女性の就労者である。
近年は女性の子育て世代の就業率が低くなるいわゆる「M字カーブ」も、保育所などの整備もあって改善傾向だ。さらに働き方改革による女性就労の促進や定年延長による高齢者の就労、また障碍者雇用の法制化と基準の強化などの政策により、介護保険制度開始以来、介護業界への就業者数自体は3倍以上増えている。
また、政府は人手不足による介護保険制度崩壊を避けるために、生産性を向上すべく介護ロボットの導入促進制度や業務のIT化推進補助金など様々な取り組みを行っている。しかし、迫りくる2025年、2035年の超介護人材不足についての解決の見込みがついたとは到底考えられない。
現在、一般的には、特別養護老人ホームでは待機者が多く入居は数年待ちであると思われている。確かに多くの待機者がいる現実はあるが、その理由として空きベッドはあるのに、スタッフ不足のために新たな入居者を入れられないというホームが増えてきていることをご存じだろうか。
新規開設はしたものの1年以上を経過しても定員の半分しか利用者を入れることができずに経営危機になっている特別養護老人ホームもあると聞く。