花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
戦後、米国は積極的に秩序構築に貢献した。それに先立つ第一次大戦後、米国は消極的だった。それが災いし、世界は第二次大戦へと突き進んだ。その轍を繰り返してはならない。米国が意図した戦後秩序は自由民主主義体制と言われる。二つの柱からなっていた。政治の国連と経済のブレトンウッズ体制だ。ブレトンウッズ体制はIMF、世界銀行、GATTから成る。しかしこれらは機構上の柱だ。最も重要なのが自由民主主義体制の根幹にある基本的価値である。自由、民主主義、自由貿易、法の支配、基本的人権の尊重等だ。これらの基本的価値が戦後、西側諸国に共有された。この基本的価値が土台となって自由民主主義体制が構築された。だからこれは、共通の価値を戴いた「価値同盟」だ。
このうち国連のたどった歴史は多くを語る必要がない。冷戦期、米ソが対立し、その最も重要な安全保障理事会が機能停止した。これに対し、ブレトンウッズ体制は1971年まで有効に機能し世界に繁栄をもたらした。貿易は拡大の一途をたどり、世界は高成長を謳歌した。ひとえに、ブレトンウッズ体制の存在が大きかった。そのブレトンウッズ体制が、1971年、ニクソン大統領による金ドル交換停止宣言により崩壊した時、誰もが世界経済の不安定化を予測した。それまで、いわゆる「覇権理論」が信じられていた。「秩序は覇権国が維持する。」その覇権国たる米国が秩序維持の責任を放棄した。
しかし、この予測は幸運にも当たることがなかった。戦後秩序は覇権国の意向に関わりなく、維持され発展していった。EU、NAFTA等、多くのFTAが発足、発展し、世界貿易は以前にも増して拡大した。ドルは引き続き基軸通貨として機能した。つまり「秩序は覇権国が維持するのでなく、関係国が集まって維持する」。何故か。維持されることが関係国自身の利益だからだ。ブレトンウッズ体制は1971年以降も形を変え実質的に維持されていった。
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