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韓国のGSOMIA破棄は東アジア秩序崩壊の序章

「北朝鮮はパートナー」「⽇本は敵性国家」の⽂在寅⼤統領

高橋 浩祐 国際ジャーナリスト

これまでの前提が通用しない文大統領

拡大訪韓したエスパー米国防長官(左)と会談する文在寅大統領=2019年8月9日、ソウルの大統領府

 そもそも韓国が、日韓のGSOMIAを必要とする大前提には、韓国にとって「日本がパートナー、北朝鮮が敵対国家(enemy)」という暗黙の了解がある。

 それはそうだろう。日本と韓国はともにアメリカと軍事同盟を結んでおり、準同盟国の関係にある。文大統領がいくら、自らの政策の一丁目一番地である「南北融和」や「民族愛」を韓国国民に必死に訴えようとも、現実には朝鮮戦争(1950~53年)はいまだ休戦状態にある。テクニカル的に言えば、南北の戦争は継続しているのである。

 しかし、今回のGSOMIA破棄の決定で明らかになったことは、文大統領にとって、こうした暗黙の了解や大前提が通じないということだ。かつてないほどの親北の左派政権で、「革命政権」を自任する文大統領にとっては、むしろ「北朝鮮がパートナー、日本が敵性国家(opponent)」との認識がある。従来の前提とは真逆なのだ。

 北朝鮮に対する脅威認識がなければ、そもそもGSOMIAは必要ないし、意味がない。むしろそれは北朝鮮を敵対視し、南北分断を固定するものとして、邪魔ですらある。

家族の歴史と国家の歴史を重ねる?

 文大統領の「親北姿勢」と「抗日路線」は、それを裏付けるようにみえる。

 韓国に対する日本の輸出管理強化の閣議決定を受け、文大統領は8月2日、「私たちは二度と日本に負けない」と述べ、抗日姿勢を露(あら)わにした。5日にも「南北の経済協力で私たちは一気に日本に追いつくことができる」と述べ、北朝鮮と一緒になって日本と対峙(たいじ)するビジョンを示した。

 15日には、日本の植民地支配からの解放を記念する光復節の式典で演説し、遅くとも2045年までに朝鮮半島の南北統一を実現するとの構想を打ち出した。また、北朝鮮が7月25日、同31日、8月2日、同6日、同10日、同16日と新型短距離弾道ミサイルを含む飛翔(ひしょう)体を相次いで6回も発射したのにもかかわらず、文大統領は南北融和を呼び続けている。

 私は、こうした文大統領の行動には、文大統領の両親が朝鮮戦争中の1950年12月に、肉親のほとんどを北朝鮮に残したまま、アメリカの貨物船「メレディス・ヴィクトリー号」に乗って、咸鏡南道興南(現在の咸興市興南区域)から韓国に逃れた「離散家族」だったことが大きく影響しているとみている。

 文大統領は2004年7月、大統領府社会文化首席秘書官を務めていたとき、2泊3日で訪朝した。公務ではなく「離散家族」の一員として、北朝鮮にいる叔母に会うためだった。文大統領は、親戚が今も暮らす北朝鮮への同胞愛や民族愛が人一倍強いようにみえる。自らの家族の歴史を国家の歴史と重ねているようだ。

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筆者

高橋 浩祐

高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。

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