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破棄される裁判記録。最高裁は一時停止呼びかけを

世間を騒がせた重要で有名な裁判の記録が次々と消えていくこの国で今するべきことは

山尾志桜里 衆院議員

拡大最高裁判所 CAPTAINHOOK/shutterstock.com

「憲法判例百選」の86%の記録破棄に衝撃

 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶという。

 しかし、この国の裁判所は、学ぶための歴史を廃棄することにためらいがないようだ。報道によれば、重要な民事憲法裁判の記録137(有斐閣「憲法判例百選」に掲載されているもの)のうち118が廃棄されたという(東京新聞:令和元年8月5日朝刊)。

 「憲法判例百選」とそれに出てくる事件は、私を含め、およそ法曹を目指してきた者であれば、誰しもがいやになるほどページをめくり、実務家になれば実際の事件の糸口を探るために立ち返る基本中の基本である。その大切な記録の86%が廃棄されたということに、私は強い衝撃をうけた。

 あわせて、憲法審査会に身を置く国会議員として、憲法改正をめぐる議論がクローズアップされている現状で、これまで憲法が果たしてきた役割や課題を深く掘り下げるための重要な資料が失われたことも、深刻に受け止めた。

裁判記録は「廃棄」が原則、「保存」は例外

 これはなんとかせねばならないと私は今、この問題を調べているが、まず冒頭で取りあえず訴えたいことがある。それは、
最高裁はすみやかに、全国の裁判所に対し記録廃棄の一時停止をよびかけよ、
ということである。

 日本の裁判記録「保存」のルールは、裁判記録「廃棄」のルールである。すなわち、「廃棄」が原則で、「保存」は例外。そして、例外としての「保存運用」が完全に麻痺(まひ)して、機能不全を起こしている。

 結論を言えば、制度が抱えるこうした病の原因を見つけ、治癒し、新たな制度構築と運用がなされるまで、廃棄を保留するべきである。最高裁はこれが社会問題化してなお、その判断を第一審裁判所に任せきりにしているが、速やかに、全国の高裁・地裁・家裁に対し、判断は保留せよ、廃棄してはならない、と呼びかけてほしいのだ。

 裁判記録にしか映し出されない、訴訟当事者の血のにじむような闘い、心に響く言論、判決書の背景に存在する膨大なファクトと知見を、漫然とシュレッダーにかけてはならない。現状のまま廃棄を続けるなら、それは過失ではなくて故意となる。裁判官の判決書さえ残ればいい、事件に人生をかけ命をかけた当事者や代理人、関係者たちの言葉による戦いの記録は廃棄していいという、裁判所の傲慢(ごうまん)かつ積極的判断だと社会に評価されても致し方ない。

 以下、具体的に検討していきたい。

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筆者

山尾志桜里

山尾志桜里(やまお・しおり) 衆院議員

宮城県仙台市生まれ。小6、中1の多感な時期に初代「アニー」を演じる。東京大学法学部卒。司法試験に合格し、検察官として、東京地検、千葉地検、名古屋地検岡崎支部に着任。民主党の候補者公募に合格し、愛知7区から国政に挑戦、2009年に衆議院議員総選挙に初当選。14年に2期目当選。16年3月の民進党結党に際して政務調査会長に就任(~9月)。17年9月に民進党を離党し、同10月に無所属で3期目当選。現在、衆議院会派立憲民主党・市民クラブに所属。著書に『立憲的改憲――憲法をリベラルに考える7つの対論』。

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