メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

豊かになった韓国人は「反日」より「生活」!

「70年以上も前の事、もうよくない!?」という娘の言葉から考えた

藏重優姫 韓国舞踊講師、仁荷工業専門大学語学教養学科助教授

ソウル市江南(カン・ナム)区の地下鉄新沙(シン・サ)駅に掲げられた美容整形の広告。手前の広告には「目、鼻、そして顔の輪郭の調和」と記されている=2017年12月4日

「70年以上も前の事、もうよくない!?」

 最近の日韓関係の問題には首を突っ込みたくなかったけど、前回の『韓国に「上から目線」のワイドショー、酷くない?』で、やはり言及してしまいました。

 一度、書き始めたら、また書かなければ、となるものですね。

 さて、ソウルで暮らす我が家の昨日の夕食の食卓でのこと。韓国のYTNの報道ニュースを見ていると、やはり日韓関係のニュースが滔々と流れていました。食卓を囲みながら家族全員が黙ってひとしきり聞いていたその時、小5の娘が口火を切りました。

 「70年以上も前の事、もうよくない!?」と、少しイラつきながらの発言。

 私はすぐ、「いやいや、それはね…」と、戦後補償の話、「謝罪した、しない」の話も大雑把にドイツと比較したり、韓国の人が納得できない例を出したりして説明。

 でも、心のどこかでは「70年以上前の事、もうよくない!?」が、ずっと私の心の中で響いていたのです。

 そう、70年以上前のこと。本来なら「片付いて」いていいものなのです。

 なのに、長女からしてみると、もう70年も経つのに、自分の中の「日本」や、母親が周りから日本人と認識されていることに危機感を感じさせられる状況に一瞬イラっときたのでしょう。(私の歩みは『日本人よ、韓国人よ、在日コリアンよ、私は私だ!』をご覧ください)

 70年以上も前の事が、今も新鮮!だから、すぐ私たちの生活に影響してくる。よく考えればこれは、まだ明らかに何かが終わっていないことを示しているのです。

決して忘れないための祭礼行事

 つい先日、ドイツ大統領は、第二次世界大戦で初めてドイツが空襲をしたポーランドのビエルンでの式典に参加し、許しを請う内容の演説をしたといいます。ドイツは毎年毎年、加害国としての反省を含めた演説を、あちらこちらで、しかもドイツの高官が、大統領が行っている。一文や二文程度で終わる短い謝罪や反省ではなく、その文句は具体的で詳細です。それで、被害者たちもある程度は心に落ち着きを感じるのではないでしょうか。

 一年に一度でいいから、この繰り返しが必要なのだと思います。

 もし、交通事故で人を殺してしまったら、罪を償ったとしても、命日などの節目節目で思い出すことは自然の流れです。そのような自然の感情を無理やり閉じ込め、加害行為が無かったようにすることこそ無理がある。

 また、日本の地方には、色んなお祭りがありますよね。祀られているのは、決して、良い神様だけではなく、大昔に罪を犯してしまったとする者や神の魂を祀って、後世の者に災いが降りかからぬよう、またその間違いを繰り返さぬよう、現在まで祭礼行事やお祭りとして親しまれていることが多い。

 先祖たちが、忘れないようにするため、後世に伝えるために残してくれたお祭りだと思うのです。

 ま、こんなこと、私がここで書かなくとも、色んな人が書いているので、もうやめますが、節目節目で良いから、伝統的祭礼のように、やり続けてこそ、未来に引き継がれる。それが人々に親しまれるお祭りのようになったり、昔話のように語り継がれたりしてこそ、それは戒めとなって、平穏をもたらすのでしょう。

 日本の韓国報道もこの数日変わってきましたね。

 実際に韓国に旅行に行ったら、韓国の人が優しかったとか、嫌な思いは一つもしなかったとか。やっとポジティブな意見がメディアでも言えるような雰囲気になったのでしょうか。さあ、次はどのように変わるか、期待されます。

「日韓交流おまつり」の会場で日本の舞踊グループと記念写真におさまる韓国の女性たち=2019年9月1日、ソウル

「反日運動」の被害者たち

 さて、韓国の報道も、また違うところに光が当たりつつあるようです。

 知っての通り、これまで、文化・スポーツ・教育などの事業が多々中止となっています。日韓両政府が主導して毎年行われている「日韓交流おまつり」は、実施され一安心ですが、しかし、中小規模のイベントなどは、人の目を気にして中止になっています。

 私自身も、自分が立ち上げから深くかかわっていた日本語教育プログラムがなくなってしまいました。大きな経済的痛手です。

 腹が立つのは、それを管轄する機関の担当公務員からのメールでした。日韓関係悪化による事業中止は残念としながらも、中止になったことを理解してくれで終わる短いメールでした。

 私の生計のかかっていることなど、一つも配慮のない文言でビックリしました。本来なら、今まで、タダで事業立ち上げの準備を手伝って来ていたのに、それに対する謝辞や詫びの件がない! 

 まあ、その担当者の個人的配慮不足だと思うことにしますが、要は、7月末の出来事ですので、上の部署や官僚に対する点数稼ぎや忖度で事業をなくしたのだという事が窺われます。

 韓国の報道も、このような中小規模の小さな被害が発生していることに光を当てつつあります。ある報道番組では、「私たちも反日の対象ですか?」と題して、反日運動で被害を被っている人達をレポートしていました。

 日本に就職が決まっている青年を「売国奴」とレッテルを張る。日本への就職に向けてもう三年も準備してきたのに、ここにきて、売国奴呼ばわりされ、日本へ行く意欲が削がれ、行くかどうか自体も不透明になってきた。でも、これまでの三年間の投資は、家族にとって高額な投資であったため無駄にはしたくないと切実でした。

 日本の物を売っている小売店や飲食店なども売り上げはガタ落ち。我慢はしてきたが、この長期化は死活問題に発展している、と報道していました。何が反日で、どこまでが反日なのか、ここを問うている報道でした。

「我慢との闘い」「生活苦との闘い」

 この報道で興味深かったのは、ソウルの光化門(カンファムン)で、反日デモをしている人たちへのインタビューでした。

 インタビュアーは聞きます。

 「この反日運動で、韓国人の中でも生活に支障が出て、大変、困っている人もいる。その人たちに対して、どう思いますか?」

・・・ログインして読む
(残り:約833文字/本文:約3405文字)