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「世界最悪の人道危機」イエメン内戦の歴史的背景

川上泰徳 中東ジャーナリスト

約1千人が暮らすジブチで唯一のイエメン難民キャンプ。夏場の気温は50度に達する=2月17日拡大約1000人が暮らすジブチのイエメン難民キャンプ。夏場の気温は50度に達する=2019年2月

 4年半続くイエメン内戦はスンニ派の暫定政権を支援するサウジアラビアと、シーア派の武装組織フーシを支援するイランの代理戦争となっているが、8月に入ってアラブ首長国連邦(UAE)の支援を受けた南部の分離独立派が中心都市アデンを制圧し、内戦は三分裂の様相となっている。

南部の分離独立派がアデンで蜂起

イエメン拡大イエメンと周辺国
 イエメン内戦ではサウジとUAEが主導するアラブ有志連合軍の空爆で、1万人近い民間人の死者が出て、破壊と難民化によって1400万人が飢餓に瀕するという「世界最悪の人道危機」が進んでいる。新たな対立・分裂は内戦をさらに複雑にし、危機を長期化させかねない。サウジとUAEは、米トランプ大統領の対イラン強硬策を支えてきた国であり、イエメンでの亀裂は、対イランでの足並みの乱れにつながる可能性もある。

 8月10日、南部の分離独立を求める「南部暫定評議会(STC)」がアデンの暫定政府軍の軍事拠点や大統領府を占拠した。サウジに滞在するハディ暫定大統領は「クーデター」と呼んで非難した。南部暫定評議会の蜂起の後、サウジとUAEが仲介に乗り出したとされたが、28日には政権軍がアデン奪還作戦に出て、それに対して、UAE空軍が政権軍を空爆して、撃退した。

 イエメンでは2011年に始まった「アラブの春」で軍出身の独裁サレハ大統領が辞任し、当時のハディ副大統領が暫定大統領として民主化と国民和解のプロセスを担った。しかし、両プロセスが進まないまま、14年に北部で武装蜂起したシーア派の武装組織フーシが首都サヌアを制圧し、15年2月に「政権掌握」を宣言した。ハディ暫定大統領は南部アデンに拠点を移し、同年3月から内戦に入った。

 そして、サウジのムハンマド・ビン・サルマン国防相(当時副皇太子、現皇太子)が主導するアラブ有志連合が、ハディ暫定政権を支援してフーシ支配地区への空爆を始めた。UAEは同国の中心国アブダビ首長国のムハンマド・ビン・ザイド皇太子が主導して有志連合に参加し、南部に5000人規模の軍を駐留させ、フーシ支配地域への空爆でもサウジ軍に協力しつつ、南部勢力への訓練や武器の支援をしてきた。両ムハンマド皇太子は、共にトランプ大統領の対イラン強硬策を支えてきた。

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

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