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「野党系無党派」が野党を進化させる

組織化されない200万票余の潜在力

木下ちがや 政治学者

拡大投票日前夜、候補者の「最後の訴え」を聞く有権者たち=2017年10月21日

野党共闘は失敗なのか?

 第25回参議院選挙は、与党がこれまで維持してきた参議院3分の2を割り、自民党も単独過半数を失った。

 その一方で、野党も候補者選定の遅れや重要複数区での取りこぼしなどの失策がみられ、与野党痛み分けと言える結果に終わった。2017年の希望の党への民進党の合流と分裂以後、野党は立憲民主党、国民民主党、社民党の間での会派統一と、日本共産党を含む選挙区一本化を焦点とする野党共闘の動向がマスコミで報じられてきた。しかしその報道の大半は「ゴタゴタ」、つまりある特定の政党や政治家、また支持団体の労働組合が共闘に反対だ、消極的だ、あるいは「この党は共闘をやる気がない」などの暴露報道に埋め尽くされ、国民目線からすると「たんに野党がもめているだけ」との印象を与えてきた。

 実際この「ゴタゴタ」は、野党に少なからぬダメージを与えている。本来なら与党との「一対一」の対決に向けるべきエネルギーが内部対立に削がれるだけではなく、とりわけSNS上での過剰な批判の応酬は、野党政治家や支持者を近視眼的な見方に陥らせ、長期的な視点で野党の変化を評価する視点を奪い去ってしまうからだ。だから今後の野党の戦略をみとおす上で重要なのは、目前のゴタゴタに与しない長期的なスパンで捉えた総括と検証である。

 実際、野党の動向を5年ほどの時間軸でみると、その協力関係は着実に進化している。

 二度の参議院選挙における全1人区の候補者一本化はいうまでもない。地方レベルでは、オール沖縄は県知事選以後の選挙で連勝を重ねている。東京都中野区では野党は都議選、区長選、区議選と連勝し、区議会多数派を握った。8月の仙台市議選では初めて全野党の市議が結集した決起集会が行われている。そして埼玉県知事選では、とても無理といわれていた当初の戦評を覆し、国民民主党系の大野もとひろ候補を、全野党が総力を挙げて支援することで当選させた。SNS上やメディアの評価とは逆に、リアルな世界では、全国、地方、地域と幾重ものレベルで野党間の共闘は着実に進化しているのである。

 野党間の共闘の動きを規定しているのは、政党や政治家ではない。共闘へと誘う力は、その支持層の性格と動向におおきくは規定されている。この支持層は、安倍長期政権の下で形成され、それが形づくる「重力の法則」によって、もはや共闘は必然的な流れになっているのだ。そしてこの重心をなしているのが、これから論じる「野党系無党派層」である。

「革新共闘」の時代との差異

 戦後政治史において、与野党を問わず政党間の連携や連合は幾度もなされてきた。

 現在では自公連立政権がそれであるが、こうした連携あるいは連合の多くは、政党本体よりも支持団体の意向に大きく規定されてきたと言える。1960年代から70年代にかけての「野党共闘」もまたそうであった。日本社会党、日本共産党、公明党、民社党による「革新共闘」である。

 この革新共闘は、地方自治体において1963年に成立した横浜の飛鳥田市政を嚆矢に、東京都の美濃部都政をはじめ「革新自治体」を全国に叢生させた。高度経済成長がもたらす都市問題への対処を結節点としたこの共闘ではあるが、内実は政党間の連合にとどまり、支持団体、支持層が相互に交流することはなかった。現在のように無党派層が多くない当時の野党と支持団体の関係は「縦割り」だった。

 日本社会党は「総評=社会党ブロック」と呼ばれたように、労働組合のナショナルセンター総評の丸抱えだった。民社党もまたもうひとつのナショナルセンター同盟の丸抱えであり、公明党はいうまでもなく創価学会の丸抱えである。日本共産党はゆいいつ、政党主導で諸階層―少数派労働組合、住民運動、中小企業等―を組織化し、この時期勢力を増大させていくが、いずれにせよ各野党の支持層は縦割りで、協調的どころか対立的だった。

 比較的似た階層を組織していた日本共産党と公明党が、選挙戦において激烈に対立するのはこの時代からのことである。したがって1980年に日本社会党、公明党、民社党による「政権構想」が発表されて以後、「革新共闘」は崩壊し、日本共産党は独自路線を歩まざるを得なくなり、それに伴い野党支持層は分岐し、相互対立の関係に陥っていったのである。

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筆者

木下ちがや

木下ちがや(きのした・ちがや) 政治学者

1971年徳島県生まれ。一橋大学社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。現在、工学院大学非常勤講師、明治学院大学国際平和研究所研究員。著書に『「社会を変えよう」といわれたら」(大月書店)、『ポピュリズムと「民意」の政治学』(大月書店)、『国家と治安』(青土社)、訳書にD.グレーバー『デモクラシー・プロジェクト』(航思社)、N.チョムスキー『チョムスキーの「アナキズム論」』(明石書店)ほか。