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輸出規制とその矛盾――韓国が北朝鮮に兵器の素材を横流しする理由はない

南北軍事境界線近くで勤務する韓国軍兵士=2015年12月、東亜日報提供拡大南北軍事境界線近くで任務につく韓国軍兵士=2015年、東亜日報提供

 経済産業省は7月1日に「日韓間の信頼関係が著しく損なわれた」として、韓国への輸出規制を発表した。具体的に何によって信頼関係が損なわれたのかは不明瞭ながら、実際の経済に与える負の効果は大きいものであった。フッ化水素などの品目に対する規制は経済制裁的な文脈で本年初頭から自民党内で語られていたこともあって、韓国はもちろん、国際的にも、これが徴用工訴訟判決に対する意趣返しであることに疑いはなかった。

 そして、日本のメディアにおいても、多くが韓国との歴史問題に関わる対立が原因であることは指摘していた。しかし、輸出規制の発表直前に行われたG20大阪サミットにおいて「自由、公正、無差別。開かれた市場、公平な競争条件。こうした自由貿易の基本的原則を、今回のG20では、明確に確認することができました」と議長国として宣言した日本にとって、報復的な行動を選択することは齟齬(そご)を生じさせてしまい、国際的な非難も浴びる可能性があった。そこで、「信頼関係を失わせた」とされる内容についての迷走が始まることとなったのである。

 初期段階で挙げられたのが、フッ化水素等の一部資材が北朝鮮に流れ、サリン等の化学兵器の原料になっているとの言説であった。これはNHKをはじめとするテレビ番組でも取り上げられ、7月7日に安倍首相がフジテレビの討論番組の中で当該事項について問われた際に「個別のことは差し控える」とし、火消しを図らなかったことで、信頼性を増すこととなった。しかし、これは韓国にしてみれば、荒唐無稽な話であり、経済制裁的に韓国へ圧力を加える根拠となり得るものではない。

 北朝鮮が化学兵器を作成した場合、その使用対象になる可能性がある国はどこであろうか。

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筆者

金恵京

金恵京(きむ・へぎょん) 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

国際法学者。日本大学危機管理学部准教授、早稲田大学博士(国際関係学専攻)。1975年ソウル生まれ。幼い頃より日本への関心が強く、1996年に明治大学法学部入学。2000年に卒業後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程に入学、博士後期課程で国際法によるテロリズム規制を研究。2005年、アメリカに渡り、ローファームMorrison & Foester勤務を経て、ジョージ・ワシントン大学総合科学部専任講師、ハワイ大学東アジア学部客員教授を歴任。2012年より日本に戻り、明治大学法学部助教、日本大学総合科学研究所准教授を経て現在に至る。著書に、『テロ防止策の研究――国際法の現状及び将来への提言』(早稲田大学出版部、2011)、『涙と花札――韓流と日流のあいだで』(新潮社、2012)、『風に舞う一葉――身近な日韓友好のすすめ』(第三文明社、2015)、『柔らかな海峡――日本・韓国 和解への道』(集英社インターナショナル、2015)、最新刊に『無差別テロ――国際社会はどう対処すればよいか』(岩波書店、2016)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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