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イエメン分裂、UAEの政策転換と孤立するサウジ

川上泰徳 中東ジャーナリスト

首都サヌア近くの村で4日、サウジ主導の有志連合軍の空爆で壊された家屋のがれきを抱える地元の少年ら=AP 拡大サウジアラビア主導の有志連合軍に空爆されたイエメンの首都サヌア近くの村=2015年4月/AP

 イエメン南部の分離独立派である「南部暫定評議会(STC)」が8月にアデンを制圧し、ハディ暫定大統領が率いる政府軍を排除したことは、南部暫定評議会を支援するアラブ首長国連邦(UAE)と、暫定政権を支援するサウジアラビアの亀裂を浮き彫りにした。アメリカのトランプ大統領が発意した米国主導によるホルムズ海峡周辺の安全通行のための国際有志連合づくりにも影響しそうだ。

暫定大統領と南部勢力の対立

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 イエメン内戦では2015年に北部にある首都サヌアがシーア派の武装組織「フーシ」に制圧された後、ハディ暫定政権は南部アデンに拠点を移した。一時はアデンもフーシに制圧されて、政権はサウジに脱出したが、その後、サウジ主導のアラブ有志連合軍の空爆や南部勢力の抗戦によって、アデンを奪還した。それ以来、ハディ大統領と南部勢力は対フーシで協力してきたが、一方で両者の間に深刻な対立が続いてきた。

 今回、アデンで蜂起した南部暫定評議会は、1994年の南北内戦で敗北した旧南イエメン勢力を中心に2007年に結成された南部運動(ヒラーク)の流れをくむ。ヒラークのインターネットサイトでは組織の目的は「解放と独立」であり、94年に南イエメンはイエメン政府によって「暴力的な抑圧」によって占領されたとする。「平和的な対話によって独立を達成する」とするが、政治指導部の筆頭は、南イエメンのイエメン社会党のビード書記長であり、現在の南部評議会の代表のアイダルス・アル・ズバイディ氏は軍事指導部の筆頭に上がっている。

 ハディ大統領は2016年にズバイディ氏をアデン知事に任命した。同じ年にUAEはズバイディ氏が率いる民兵組織「治安ベルト部隊」を創設した。しかし、17年にハディ大統領はズハイディ知事を解任し、ズバイディ氏は南部の分離独立を求める南部評議会を設立した。委員長のズバイディ氏を含め、5人の南部地域の知事が指導部に名前を連ねている。この時にハディ暫定政権と、南部暫定評議会の対立は決定的になっていた。むしろ、それから2年間、南部評議会が暫定政権に協力してきたのは、サウジと協力するUAEの抑えがあったためと思える。

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

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