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イエメン分裂、UAEの政策転換と孤立するサウジ

川上泰徳 中東ジャーナリスト

イエメンから駐留軍を撤退させたUAE

 南部暫定評議会の蜂起の背景には、2カ月ほど前の7月上旬に、UAEがイエメン南部に駐留させていた5000人規模の自軍の大部分を撤退させたことがある。UAEは撤退の理由を、2018年12月にスウェーデンのストックホルムで国連の仲介で合意された南部地域の停戦協定(ストックホルム合意)を実施するためとしたが、イエメン内戦でのサウジやUAEの空爆に対する国際的な批判の高まりと、イランを巡る緊張の高まりを受けたUAEの政策転換があるとの見方が強い。

 イエメン内戦では、4年間で約1万人の民間人が犠牲になり、中には10万人近い死者が出たとの推計もある。うち3分の2が、サウジやUAEが主導するアラブ有志連合の空爆によるものとされ、国際的な非難があがっている。さらに18年10月には、国連がイエメンで1400万人が飢餓の危険に瀕しているという警告を発した。

 非難の高まりを受けて、米議会ではサウジやUAEへの武器売却がイエメン内戦を激化させているとの批判が強まり、6月には米上院が武器売却を阻止する決議案を可決し、7月には米下院が同様の決議案を可決した。トランプ大統領は決議に拒否権を発動した。この状況で、UAEがイエメンから自国軍の撤退を実施したのは、トランプ政権が終わったのち、米国から武器売却を受けられなくなることへの懸念を強めたためとみることができる。

UAEはイラン情勢の悪化をより警戒

 6月、ホルムズ海峡で日本船籍のタンカーなど2隻が攻撃を受けた。米国はイランの仕業として非難し、海峡の航行の安全確保のために国際的な有志連合創設の考え方を示すなど、米・イランの緊張が高まった。UAEのイエメン撤退は、こうした時期に

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

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