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高速実証炉断念。「原発大国」フランスは曲がり角

原発に思い入れのないマクロン政権。日本と共同研究中の「アストリッド計画」を放棄

山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト

巨額の負担金からのがれた日本

拡大廃炉作業が進む高速増殖原型炉「もんじゅ」=2019年7月25日、福井県敦賀市、
 安倍首相は2014年5月5日のエリゼ宮(仏大統領府)での日仏首脳会談で、「安全性の高い新型原子炉ASTRIDを含む高速炉の技術開発協力に関する取り決め」で合意し、オランドと共に署名した。フランス政府はこの時、日本政府に対し、「もんじゅ」(当時は事故続きで無期限停止中、2016年12月に廃炉が決定)でASTRIDの可燃性燃料のテストをするために、「もんじゅ」の再起動を要請したという(日本外交筋)。

 フランス政府は16年10月には日本政府に対し、ASTRIDの経費分担も要請した。当時の総経費の予測は50億ユーロだった。日本は「経済成長においてはイノベーションが重要である」という「日仏合意」のもと、体よく巨額の負担金を課せられるところだったが、計画の放棄で助かったわけだ。

“金食い虫”の計画

 ASTRID 計画は日本への経費支援を仰いだころには、すでに“金食い虫”としてお荷物になり始めていた。CEAは18年初頭には、当初計画の出力600メガワットを100~200メガワットへの削減の検討を迫れていた。

 15年には、日本における福島の原発事故や環境重視の世界的趨勢の中でその「安全性」が問題になり、仏放射線防護原子力安全研究所(IRSN)による検査を実施するべきだとの意見も出された。18年6月には朝日新聞がASTRID計画に協力する日本政府に疑問を示す記事を掲載している。

 フランスの環境省は今回の計画放棄の理由として、経費高騰という経済的理由あげている。2019年8月現在、7億3800万ユーロをすでに費やし、このまま計画を遂行した場合は、50~100億ユーロが必要との試算もある。さらに、「ウランの価格が目下のところ安く、ストックも豊富」(ボルヌ環境相)なことも理由に挙げられている。CEAは計画開始当時、ASTRIDは「ウランなどの燃料のリサイクルが無限に可能」を利点に挙げていた。

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在フランス・ジャーナリスト

産経新聞パリ支局長を1990年から2011年までつとめる。著書に『ドゴールのいるフランス』(河出書房新社)、『フランス人の不思議な頭の中』(KADOKAWA)、『原発大国フランスからの警告』(ワニブックスPLUS新書)、『フランス流テロとの戦い方』(ワニブックスPLUS新書)、『ココ・シャネルの真実』(講談社+α新書)、『パリの福澤諭吉』(中央公論新社)など。ボーン・上田記念国際記者賞、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞。

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