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国民の価値観から見えた野党と与党がとるべき道

れいわ新選組を支持するのはどういう人か?自民支持・不支持を分けるものは?

三浦瑠麗 国際政治学者・山猫総合研究所代表

拡大AlexLMX/shutterstock.com

 立憲民主党と国民民主党が衆参両院で統一会派を組みました。残る無所属の人びとの今後の身の振り方も注目されますが、7月の参院選の結果を踏まえ、まずは国会で協働しつつ次期衆院選での現実的な戦い方を考えているものと思われます。

拡大統一会派結成へ会談に臨む立憲民主党の枝野幸男代表(右から2人目)と国民民主党の玉木雄一郎代表(左から2人目)=2019年8月20日、国会内
 最大野党である立憲民主党は危機感を覚えたのでしょう。選挙戦が盛り上がらない一方で、2議席を得たれいわ新選組が現在の野党に満足しない批判勢力の受け皿として注目され、マスコミの話題をさらったからです。一方で、報道はすでに野党をめぐる話から内閣改造に移っています。

 参院選前は情勢報道がかまびすしく、選挙後には政党の勝ち負けや政局報道が盛んになる。こういう時だからこそ、冷静に政党と日本人を分析してみたい。本稿が取り上げるテーマは二つ。ひとつは、れいわ新選組に投票した人は一体どのような人たちであり、何が動機だったのかという問い。もうひとつは、自民党とその批判者たちとのあいだの最大の価値観の違いは何であり、日本人は何を巡って争っているのかという問いです。そこから見えてくるのは、日本社会の姿そのものです。

主張の鮮明さで注目されたれいわ新選組

拡大参院選で躍進したれいわ新選組の選挙カーに書かれた公約。消費税廃止など分かりやすい=2019年7月19日、東京・新橋
 れいわ新選組が注目された一番の理由は、主張がはっきりしていることでした。例えば、消費税については、増税反対にとどまらず、「廃止」を主張する。また、原発については「ゼロ」を打ち出す。いずれも生活者が実感しやすい問題であり、野党の政治家の間からは、「うちももう少し(実現可能性はともかくとして)はっきりポジションをとり、分かりやすさを重視すればよかった……」という反省の弁もちらほらと聞かれました。

 しかし、こうした感想は、あくまでも目先のコミュニケーションや広報戦略にのみを問題としています。その選挙戦略に改めるべき点は多々あれど、最大の得票をした野党は立憲民主党であり、れいわ新選組はあくまでも2議席しか獲得しなかったという事実は、きちんと押さえておくべきでしょう。そのうえで、れいわ新選組に投票した人の意識はどのようなものか、客観的に見ていきたいと思います。

 分析の元になるデータは、弊社(山猫総合研究所)が参院選後に行った意識調査です(日本人価値観調査2019 *1)。最初に断っておきますが、れいわ新選組の比例代表に投票した人数は全回答者の3.6%です。この人数ですと、統計分析には適当な数ではありません。そこで、一人一人の回答者に着目し、その傾向を見ていくことにします。

*1 株式会社マクロミル社のパネルを利用したインターネット調査。収集した回答は2060人。割付は全国の18-19歳が206サンプル、20代、30代、40代、50代、60代、70代以上の各セグメントについては309サンプルであり、2018年時点の年代別人口に合わせて補正を行っている。調査期間は2019年8月30日~2019年8月31日。インターネットのパネル調査の性質上、インターネットユーザーである、意識が高いなどの偏りは当然存在する。投票率は実際よりも高い傾向にあり、そのなかでも投票した人を対象に分析した場合、自民党と公明党が過小代表される傾向にある。国民民主党も、実際よりも過小代表される傾向にある。


筆者

三浦瑠麗

三浦瑠麗(みうら・るり) 国際政治学者・山猫総合研究所代表

1980年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。専門は国際政治、比較政治。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て現職。著書に『シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)、『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)、『21世紀の戦争と平和 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)など。政治外交評論のブログ「山猫日記」を主宰。公式メールマガジン、三浦瑠麗の「自分で考えるための政治の話」をプレジデント社から発行中。共同通信「報道と読者」委員会第8期、9期委員、読売新聞読書委員。近著に『日本の分断―私たちの民主主義の未来について』(文春新書)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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