藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
【21】ナショナリズム 日本とは何か/最終回
ナショナリズムとは何か。私はそれを、国家、国民としてのまとまりを追い求める近代以降の現象ととらえ、この連載で幕末以降の日本を点描してきた。
きっかけは「日本国と日本国民統合の象徴」とされる天皇の交代だった。
この春、平成の天皇陛下(85)が退位した。歴代で始めて「象徴」として即位した天皇が発した、高齢ゆえに「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなる」という告白に、私は揺さぶられた。
そもそも日本を天皇が象徴するとはどういうことか。考えあぐねた私は4月からの連載に先立ち、姜尚中・東大名誉教授(69)に助言をいただいた。在日コリアン2世として、日本のナショナリズムを内と外から見つめてきた先達の言葉は、茫漠(ぼうばく)たるテーマに戸惑う私の背中を押した。
「天皇と国民は合わせ鏡です。だから新元号で『世替わり』をする時も、天皇を奉って過剰な期待を持ったり、逆に過小評価したりするのはそぐわない。国民がどういう意思を持って象徴天皇にあるべき姿を与えていくかが一番大切なんじゃないかな」
明治以降、近代国家・日本をひとまとまりの存在としてあらしめ続けようとしてきた営みは、まず「万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」という形で現れ、戦後は象徴天皇と「合わせ鏡」の国民に委ねられた。そのナショナリズムをたどる旅を続けるうち、時代は令和へとかわり、数カ月が経った。
この連載を終えるにあたり、姜さんに改めて時間をいただいた。