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香港では台風が来ても出勤すべきか迷わない

システマティックで統一された対応に学べ

富柏村 ブロガー

台風15号の影響でダイヤが大幅に乱れ、JR三鷹駅では朝9時過ぎには入場規制がかかり、駅構外まで長い列ができた=2019年9月9日

 千葉や羽田空港で観測史上最強の暴風を記録した台風15号。首都圏では、台風が関東地方に夜遅く上陸すると見込まれた8日夕方には、JR東日本が翌9日の始発から午前8時頃まで運転見合わせの計画運休を発表した。首都圏では昨年9月の台風24号以来の2回目。台風の接近を前に交通機関は早めの運休を決めたことで、市民の帰宅を早め、翌朝の通勤通学に支障が出ないようにする措置だった。 

 台風15号は関東での風雨のピークは9日未明から朝方にかけてで、風雨が弱まるにつれ、午前8時とされた鉄道再開を目指し鉄道駅には通勤客が集まり始めた。しかし暴風が弱まるのが予想より遅く、鉄道施設の安全確認の作業にも時間がかかり、倒木など被害もあり運転再開は遅れが出た。それにより津田沼や川崎、都心でも新宿などで乗客が運転再開を待ち、構内ばかりか外にまであふれた。

 計画運休の措置をとったところで運転再開となれば、多くの通勤客が集中することで駅の入場制限となり、混雑でダイヤも乱れる。勤労者にとって、台風来襲でも交通機関が動きだせばすぐに出社しないといけないという使命感、配慮がある。従業員の安全確保のため在宅勤務や通勤遅延を認めた企業でも「有給休暇の積極的活用」を勧める事例もあり、それはニュースで好意的に紹介されていたが、これも結局、台風という自然災害に対して個人の年休消化という代償を求めている。つまり台風被害も自己責任と犠牲で何らかの対応をしないといけない。

 こうした対応を抜本的に解決する手段はないのか。ここで香港のシステマティックな台風対応を紹介しよう。

香港のシステマティックな台風対応

 台風を含む熱帯性低気圧に対しては、これまでの被害を教訓にシグナル(警報)制度が確立している。1、3、8〜10の5段階(途中の数字は現在は取り消し)

1 スタンバイ 香港から半径800km以内で接近予想
3 強風 香港近海で風力41〜62km/h、中心は110km/h
8 暴風 香港近海で風力63〜117km/h、中心は180km/h
9 暴風がさらに増強、あるいはそれが予想される
10 風力118km/h以上、中心h220km/h

 これを決めるのは香港天文台で、1と3は「警戒」で1→3、3→8になる場合、混乱がないよう事前に2時間以上前には天文台から予告が出る。

香港天文台の熱帯性低気圧警報シグナルチャート
 1と3は警戒警報のため通勤、通学(小学校以上)は通常通り。8になると香港全域の公共交通機関はほぼ運休で公共機関、金融市場、学校や民間企業も休業で自宅待機となる。翌朝が8になる可能性が高い場合は前晩から予告の予告が出る。朝はシグナルの発令は午前6時なら6時を目安として、その時点で、その日の、少なくとも午前中の状況が決定する。これは、通勤通学が始まった朝の時間帯にシグナル3→8では出勤通学取りやめで大混乱となるので、前倒しのシグナル発令が慣例としているのだ。朝、多少早く目を覚ましてシグナル8が出ていれば、二度寝。会社と連絡を取り合うことも、謝る必要もない。シグナル8で仕事相手も用件はキャンセルと心得ているからだ。


 天候の回復によって、正午なり午後3時なりにシグナル8→3となる場合、

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