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ソウルの日本大使館近くで開かれた1400回目の水曜集会20190814拡大ソウルの日本大使館近くで開かれた1400回目の水曜集会=2019年8月14日

8月27日(火) 午前中、局で「報道特集」の定例会議。日韓関係悪化をGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄の観点から取材することになった。それで午後になってから、僕が韓国へ急遽行くことになった。相棒の日下部正樹キャスターが行けない事情があるらしい。そのための打ち合わせを随時やっていく。エバンス・リビア元アメリカ国務次官補代理は、今週はポルトガルとイギリスに滞在しているので、リスボン滞在中にSKYPEでインタビューをオファーする。準備が整わないまま、あとは現地でコーディネーターさんと一緒に動きながらやっていくしかない。

 八丁堀の東京湾ホエールズ企画の最終回で、こぐれみわぞう&大熊ワタルのコンサートがあるというので、ちゃんと見届けようと思って出かけた。あしたは朝5時半に家を出なければならず早い出発だが、飛行機のなかで眠れば何とかなるだろう。でも行ってよかった。少しだけ、大熊ワタルさんと話をした。みわぞうさんと、不破大輔さん&玉井夕海さんらが一緒になって「平和に生きる権利」を歌うのを見ていて、何だかこみあげてくるものがあった。自分が弱っているのだろうか。N君よりは先に会場をあとにする。

8月28日(水) 朝の便で羽田からソウルへ。手土産の購入やら両替やら雑務をやりながら、Rディレクターと打ち合わせをする。Rは今回が韓国へ行くのが初めてということだった。午前11時過ぎにソウル・金浦空港に着く。空港に見知った女性がいた。前回の韓国取材でもお世話になった通訳とコーディネーターをやっているKさんである。ほっとした。前回はシンガポールでの米朝首脳会談の時に韓国を取材した際、実に手際よく動いてくれた経験があるからだ。

 地元のカメラクルーとも合流して、そのまま日本大使館前の水曜集会へ。従軍慰安婦問題の解決を求める水曜集会は、この日が1402回目。250人くらいの小ぶりのものとなっていた。参加者をみると若い人たちが多い。竹島(ドクトゥ)をまもれという制服姿のナショナリスト集団もいたが、大部分は歴史認識やフェミニズムに関心のある一般市民という感じだった。

 ちょっと意外だったのは日本からわざわざ来た日本の女性(大学生)もいて、ステージに上がってスピーチしていた。ごく普通の大学生で、慰安婦の問題を学ぶにつれて日本政府の姿勢に怒りを感じるようになった旨を話していた。彼女以外にも日韓共同でアート展示をやっている日本の大学生たちのグループもいた。水曜集会も今はこのような感じになっていた。韓国の16歳の修学旅行生たちのグループもいた。ホワイト国除外は自由貿易の精神に反する。GSOMIAは不必要ならやめてもいいんじゃないかなどあっけらかんと話していた。別の男女のカップルは、報復合戦となっているのはよくない。文化交流は続ける方がいい、1965年の基本条約以来ボタンの掛け違いがあった、両方の政府に責任がある、日本製品の不買運動はピンと来ないなど、実に率直な意見を話してくれた。日本だと、どうだろう。こんなまともな答えが返ってくるだろうか。

 その後、京郷新聞の解説委員にインタビュー。ハンギョレ新聞の解説委員にインタビューを申し込んでいたが、全く返答がない。それどころかどうも今回は無理というニュアンスが伝わってきた。京郷新聞の編集委員氏は、東日本大震災の時に東京特派員として勤務していた人物。日本語も流暢に話すということで、日本語でのインタビューとなる。徴用工判決は、三菱重工などと和解の動きがあったが、安倍政権になってから企業ごとの行動はダメということになった。それがなかったら和解の可能性もあったかもしれない。日本側に文在寅政権は「反日」という偏った評価が初めからあったのではないか。日本の学生たちは韓国に対する侵略の歴史を知らなすぎる。今は双方、頭を冷やすことが最も大事だ。韓国のメディアも日本に対する敵意を煽っていた面があったと思う。ここまで書かなくてもいいんじゃないか、と思うこともあった、と。

文在寅大統領から法務相に指名されたチョ国・前大統領府民情首席秘書官=東亜日報提供拡大法務相就任をめぐって大きな反発を受けた曺国(チョ・グク)氏=東亜日報提供
 その後、夕刻から文在寅政権の足元を揺るがすスキャンダルと報じられている法務大臣候補者・曺国(チョ・グク)氏の疑惑を糾弾するソウル大学生たちのキャンドル集会に。700人以上いただろうか。面白かった。キャンドル集会は独特の雰囲気がある。蝋燭の火は抗議の感情に似合う。娘の不正入学疑惑であるだけに、ソウル大学生たちの怒りは強かった。「曺国氏に法務大臣の資格はない!」と口々に批判していた。ただ文在寅大統領への批判は注意深く避けられていた。

 あと驚いたことのひとつは自前のカメラでネットで生中継している普通の市民が大変な数になっていた。ネット社会化は韓国がものすごく進んでいることを実感。あとはキャンドル集会のスタイルが日本の同世代の集会に比べておシャレだ。特にラップミュージックにあわせてキャンドルを揺らすパフォーマンスはなかなか楽しいし、魅力的だ。若い人はカッコ悪いもんには惹かれない。

 膝の痛みが再発してきた。まいったなあ。夜遅く、ソウル支局長のSらとともに遅い夕食。ソウル支局はいま殺人的な忙しさだ。けれども記者冥利に尽きるということでもある。羨ましい。

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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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