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モンスター・中国の世界的脅威と日本がすべきこと

かつて鄧小平の改革開放に期待した世界的経済学者コルナイ・ヤーノシュは今、何を思う

吉岡桂子 朝日新聞編集委員

民主的な原則を守る手段をもつEU

拡大コルナイ・ヤーノシュ氏=ハンガリー・ブタペストの自宅で

――体制のせめぎ合いは今なお続いている、と。ハンガリーはチェコやスロバキアとともに2004年、欧州連合(EU)にも加盟しました。EUには欧州のさまざまな体制が同居しているわけですね。

 ハンガリーがEUに入ったのは正しい選択でした。EUは少なくない困難に直面していますが、私は今もそう考えています。EUは欧州の国々のあいだの対立や戦争に抗する力強い手段になっています。

 もちろん、すべての地域をひとつの政府が統治する欧州合衆国は、誰も望んでいない。そんな極端な中央集権をとらなくても、EUは民主的な原則を守り、協力の土台を築いていく手段をもちあわせています。「ブレグジット」は不幸な出来事です。英国はEUのメンバーでいるコストと離れるコストの計算を表面的にしかできなかったのでしょう。

古いタイプの経済システムに戻りつつある中国

――一党独裁を続ける中国は高成長をとげ、世界第二の経済大国となりました。コルナイ教授は1985年に中国政府系シンクタンクと世界銀行に招かれ、のちにノーベル賞を受賞したジェームス・トービン氏らと中国に1カ月滞在し、趙紫陽首相を筆頭とした当時の高官らに経済を講義しました。国営企業改革もテーマだったそうですね。

 中国について言えば、ポスト毛沢東の初期はすばらしい速度で成長しました。中国の長年にわたる高成長は、市場改革によってなしとげられたものです。しかしここ数年、その高成長は減速しています。同じ発展段階にある他の新興国の成長率と変わりません。

 中国というモンスターが野心を膨張させて世界に脅威を与えています。その(力の)前提にあるのは、市場化によって牽引されてきた高成長がもたらした経済力です。ところが現在、市場改革は後退し、中央がコントロールする古いタイプの共産体制のもとでの経済システムに逆戻りしつつある。

――中国の体制では、自由な発想が生まれずイノベーションは難しいとコルナイ教授は指摘してきました。ただ、今の中国を見ると、AIなどで世界に先んじる開発力をみせるようになっています。それは米国にも脅威を与えています。

 中国発のイノベーションは、どこまでオリジナルなものでしょうか。それほどないでしょう。一見「中国発」と見えるものも、実はそうではない。アメリカ、ドイツ、日本、スイスで創造されたものをうまくまとめあげて、すばやく追いついてきたといえます。

 中国の将来について答えることにはためらいがありますが、私は政治の深い変化がなければ成長が難しいということが、いずれ分かると思っています。当面は投資をもっと増やすことで成長を維持していく可能性も排除できませんが……

拡大中国の華為技術(ファーウェイ)のスマホの広告。華為はハンガリーにも拠点を持ち、同社のスマホも人気がある。米国の同社への批判を気にする消費者は少ない=2019年7月19日、ブダペスト、吉岡桂子撮影

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筆者

吉岡桂子

吉岡桂子(よしおか・けいこ) 朝日新聞編集委員

1964年生まれ。1989年に朝日新聞に入社。上海、北京特派員などを経て、2017年6月からアジア総局(バンコク)駐在。毎週木曜日朝刊のザ・コラムの筆者の一人。中国や日中関係について、様々な視座からウォッチ。現場や対話を大事に、ときに道草もしながら、テーマを追いかけます。鉄道を筆頭に、乗り物が好き。バンコクに赴任する際も、北京~ハノイは鉄路で行きました。近著に『人民元の興亡 毛沢東・鄧小平・習近平が見た夢』(https://www.amazon.co.jp/dp/4093897719)

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