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「ポスト安倍」へ始動 菅氏vs岸田氏の対立軸は

永田町政治の興亡・令和(1)/鮮明になった「安倍・岸田」対「二階・菅」の構図

星浩 政治ジャーナリスト

菅官房長官と連携した二階氏

 政治家の秘書からたたき上げて、自民党、新生党、新進党、自由党、保守党と渡り歩いて自民党に復党。いつの間にか派閥領袖、総務会長、幹事長にのし上がってきた二階氏。首相が提示した人事案をつぶすからには、それなりの勝算があったはずだ。

 それは、安倍首相の最側近、菅義偉官房長官との連携である。

 2012年末に第2次安倍政権が発足して以来7年近く、官房長官として政権を支えてきた菅氏。沖縄の基地問題や森友・加計学園での冷徹な対応は、世論の批判も浴びたが、霞が関の官僚群には、人事権を使ってにらみをきかせてきた。前天皇の生前退位から新天皇の即位を取り仕切り、新元号「令和」発表で知名度は急上昇。「ポスト安倍」の候補に名が上がってきた。

 その菅氏が目を凝らしてきたのが、安倍首相の党役員人事と内閣改造だ。岸田氏を幹事長に起用して党務を仕切らせた後、後継の総裁・首相に指名するのではないか。そう察知した菅氏は二階幹事長と連絡を取り合った。

 この乱世に岸田氏で総理は務まらない――。

 2人の認識は一致した。まずは「岸田幹事長」を阻止しなければならない。連立政権の現状でいまの自民党幹事長に必要な「公明党とのパイプ」が岸田氏には欠けている。その点を突けば、安倍首相の人事構想を崩せる。そんな共通認識が、二階氏の牽制(けんせい)に対する安倍首相への反応につながった。

拡大二階俊博幹事長(右)と岸田文雄政調会長=2019年9月11日、東京・永田町の党本部

菅氏の脳裏をよぎる梶山静六氏の思い

 そもそも、安倍首相が岸田氏を後継に推そうとするのはなぜか。

 1993年の当選同期。タカ派の清和会の安倍氏とハト派の宏池会の岸田氏だが、個人的には信頼関係を築いてきた。岸田氏が第2次安倍政権の発足から4年7カ月、外相として「安倍外交」を支えたことも、安倍氏の岸田氏評価につながっている。

 しかし、二階、菅両氏の岸田氏評価は違った。「戦わない政治家」「官僚任せの政策では改革は進まない」と手厳しい。80歳の二階氏、70歳の菅氏を飛び越えて62歳の岸田氏が首相に就けば、世代交代が一気に進む。その動きを阻みたいという思いも、二階、菅両氏にはあるだろう。

 菅氏の政治の師だった梶山静六氏は、橋本龍太郎内閣で官房長官を務めた後、不良債権の早期処理を中心に「破壊と創造」を唱え、大胆な改革を訴えた。橋本氏の後継を選ぶ総裁選に出馬し、小渕恵三、小泉純一郎両氏と戦った。「軍人、凡人、変人の争い」(田中真紀子氏)と揶揄された総裁選で梶山氏は敗れたが、「ハード・ランディング」と呼ばれた改革路線は、官僚・財界の一部では高く評価された。

 ポスト安倍で動き出す政局で菅氏の脳裏をよぎるのは、かつての梶山氏の思いだろう。

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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