韓国はどこへ行くのか?日本は何をすべきか?
2019年10月01日
9月末の国連総会には、安倍総理も文大統領も出席してそれぞれ複数の外国首脳と会談したが、二人の会談は行われなかった。
米韓首脳会談においても日韓関係は話題にならず、世界のほとんどの国が、日韓関係には関心がないのが事実である。
今日、米国と欧州の有力紙における国際問題の報道や解説の中心は、イランの動向をはじめとする中東情勢であり、東洋の片隅で行われている日韓間の小競り合いがニュースになることはめったにない。
この日韓間の意地の張り合い状態に関して、一時は米国や中国が仲介の姿勢を示したこともあったが、日韓双方とも外国による仲介には消極的であり、今やこの問題は両国自らが努力するしか方法はない。
この観点からは、26日にニューヨークで行われた茂木新外相と康韓国外相との会談において、主要争点については平行線をたどったものの、未来志向の日韓関係を目指して外交当局間の話し合いを継続することで一致したのは、大いに歓迎すべきである。
二国間問題の解決のためには、両当事者が歩み寄りを示す必要があるが、現状を見るに、両国とも厳しい対決姿勢を示せば示すほど国内で支持率が上がる、という「いけいけドンドン」の雰囲気が背景にあることが懸念される。
この状況が継続すると、韓国においては、来年春の国会議員選挙で与党の共に民主党が勝利し、その勢いで憲法を改正して文大統領の2期10年の独裁体制が築かれる可能性もある。
他方日本においても、自民党党則を改正しての安倍4選も排除されず、次期衆議院選挙での勝利、さらには憲法改正へと進むことも視野に入る。
日韓の双方において国内情勢がそのように進展することは、民主主義社会における国民の支持に基づくものである以上、国民はそれを受け入れざるを得ないという考え方は当然あり得る。
しかし東アジアの安全保障環境を俯瞰すると、日本にとって全く好ましくない状況が醸成される可能性が強い。
現在の東アジアの安全保障は、「日米韓」と「中露北」の均衡による相互抑止が働くというものである。しかるに文大統領の究極の目標は、南北統一による主体性の回復であるが、北朝鮮が平和的に非核化を実施する可能性はまずゼロと考えざるを得ないので、核保有国としての統一朝鮮の実現が現実味を帯びてくる。
韓国の歴史を改めて見ると、14世紀末に李成桂が高麗にかわって朝鮮半島を統一して李王朝を建設して以来、500年にもわたる明、清への冊封による属国化、その後の日本による併合、さらに日本の敗戦による南北分裂という歴史を通じて、真の独立と統一を実現できなかったところ、やっとその悲願の達成に向かってしゃにむに突き進む時期が来たと判断しているのであろう。そして安全保障の新たな構図として、核兵器に守られた3極、すなわち「日米」「中露」および「統一朝鮮」の並立を描いているのであろう。
しかし北朝鮮が保有する核兵器及びその運搬手段を温存したままでの南北統一では、新国家の骨格に金正恩ほかの北の支配層とその思想が残ることは避けられないのである。文大統領はこれにより、統一朝鮮を、核についての主体性のない日本よりも上位に位置付けんとしているとも読み取れる。日本としては、中国、ロシア、統一朝鮮という3つの核保有国に囲まれるという構図は恐ろしい悪夢である。これは何としても妨げなければならない。
文大統領によるこのようなシナリオの流れに棹差す結果を生じさせたのが、まさに7月初めの日本政府による対韓国輸出管理強化措置である。
これは本来は、日韓の二国間問題とは全く切り離して、韓国の輸出管理制度を国際基準に則したものとさせるために、2~3年前に地味な形で行われるべきものであった。それを①いわゆる徴用工問題で韓国の信頼が薄れたタイミングで、②「ホワイト国」からの格下げという韓国のメンツを無視した形で、③事前の協議なしで抜き打ち的に新聞にリークするという方法で行ったために、韓国側の過剰な反応を惹起させてしまった。
さらにこの措置の公表に合わせて行われた経済産業大臣による背景説明のブログなどで、徴用工問題の大法院判決に基づく信頼の欠如を明記したことも、韓国によって「報復措置」と受けとられた原因となったことは明らかである。
7月初めの輸出管理強化措置発表から約3か月経過した現在、日韓間の相互不信の増大、観光客や市民交流の激減、日本品不買運動の蔓延などは看過できないレベルに達している。日本政府関係者の中には、もともと韓国との関係が深化しすぎたことが問題なので、それが多少後退した現状には何の痛痒も感じないとうそぶく向きもある。
これは二国間関係しか見ていない皮相な見方であり、上記2.に述べた東アジアの安全保障構図の変化とそれによる日本への悪影響を見落としていると言わざるを得ない。
韓国をこれ以上北朝鮮・中国寄りとさせないためには、日本側も一定の歩み寄りを示して、韓国内の良識ある世論を喚起する必要がある。
現在日本政府は、今日の関係悪化は韓国が作り出したのであるから、まず韓国側においてその原因を是正すべきであるとの観点から、事態を静観して自らは関係改善のために特段のイニシアチブを取ろうとしないように見受けられる。
もし日韓関係の悪化が単なる二国間関係の問題に終わるのであれば、そのアプローチは一概に誤りとは言えないのかもしれない。しかしながら、現在の状況によって東アジアの安全保障構図が変化して、日本の国益に重大な影響を及ぼすのであれば、そのアプローチは極めて危険な要素をはらむこととなる。
これに関して、25日のニューヨークにおける日米首脳会談において、トランプ大統領から、日韓関係の悪化が東アジアの安全保障に影響を及ぼすとの懸念が示されたことは注目に値する。
私は、以上のこの観点から、日本政府は日韓関係の修復のために、以下の措置を直ちにとるべきと確信する。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください