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トランプ弾劾審議の源流はバイデン父子の腐敗問題

ウクライナ危機下のバイデン父子の動きを追うと見えてくる不都合な事実

塩原俊彦 高知大学准教授

ウクライナ危機下のバイデン父子

 つぎに、いわゆる「ウクライナ危機」について思い出してみよう。

 ウクライナでは2013年末ころから危機的状況が表面化し、2014年2月、当時のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領が「武装蜂起」によってウクライナからの脱出を余儀なくされるという事件が起きる。その後、ロシアによるクリミア半島併合やドンバス地方の地位をめぐる争乱などが生じる。

 当時、バイデン副大統領はバラク・オバマ大統領のもと、ウクライナ問題を担当していた。この際、バイデンや息子が「問題行動」をとっていたのではないかと疑われていた。
ここで、2014年に上梓した拙著『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)における記述(pp. 19-20)を紹介したい。

 (2014年:引用者注)5月に入って、オバマ政権内部に少なくともモラルに欠ける状況が根深く存在することが明らかになった。それは、ウクライナの民間石油ガス会社(Burisma Holdings)が5月に明らかにした事実に基づいている。すなわち、ロバート・ハンター・バイデン(ジョー・バイデン副大統領の次男)が4月18日に取締役に就任したと公表したのだ。同月、同社取締役にデェボン・アーチャー(Devon Archer)も就任していた。彼は、ジョン・ケリー国務長官家の友人で、ハンターの親友である。バイデン副大統領側は、あくまで息子は民間人であり、法律家として民間企業の取締役に就任したにすぎないと強弁しているが、バイデン副大統領は4月21日、キエフを訪問し、アレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行やアルセニー・ヤツェニューク首相と会談し、ウクライナを主導するような態度を露骨に示したとされる。会談のテーブルの上座に座り、両側にウクライナ指導部の要人が座ったというのだ。ウクライナは今後、米国による支援を前提に国づくりをするものと思われる。その過程で、ウクライナの大統領以上に指導力を発揮することになるとみられるバイデン副大統領の息子がウクライナでビジネスを行うわけだから、その恩恵に浴すことになるとみて間違いないだろう。つまり、こうしたやり方は少なくとも道義的に赦されない。

 ついで、2015年に刊行した拙著『ウクライナ2.0』(社会評論社)でも、つぎのような指摘をしておいた。腐敗していたとされるヤヌコヴィッチ元ウクライナ大統領周辺(「ファミリー」)について記述したものである(p. 78)。

 第一副首相、国家安全保障・国防会議書記、大統領府長官などを歴任したアンドレイ・クリュエフも「ファミリー」メンバーだ。アンドレイの弟セルゲイがビジネスに従事して、資産を拡大した。弟は現在、国会議員。ほかに、ニコライ・ズロチェフスキーも「ファミリー」の一人とされている。彼は、バイデン副大統領の息子が取締役に就いたウクライナの民間石油ガス会社、ブリスマ・ホールディングス(Burisma Holdings)の事実上でオーナーで、かつてヤヌコヴィッチ大統領政権で環境相だった。その意味では、ズロチェフスキーはバイデンの息子を取り込んで、今後、ブリスマを中心にウクライナでのシェールガス開発などを目論んでいる。

 そもそも息子のハンターは法律家であり、ガス事業についてはまったくの素人だし、ウクライナ経済についても知らない。そんな人物がなぜブリスマ・ホールディングスの取締役に就いたのか、判然としない。にもかかわらず、ブリスマはハンターのRosemont Seneca Partners LLCに2014年4月半ばから2015年末までから総額340万ドル(別の情報では、14カ月間に310万ドル)を支払ったとされる。ハンターはブリスマの取締役として少なくとも85万ドルの報酬を得たらしい(「ニューヨーク・タイムズ」電子版2019年9月27日付)。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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