世界で二番目にクールな街シモキタの再開発の物語
対立から対話、和解と協働へ。これは単なる再開発ではない/街の写真は矢郷桃さん撮影
保坂展人 東京都世田谷区長 ジャーナリスト
ザワザワとした雑居性と味わい深い文化を残す
「下北沢」には、ザワザワした雑居性があり、演劇・お笑い等の小劇場では、味わい深い文化が宿っています。ずっと以前から、映画・演劇・音楽・文学と異なるジャンルのアーティストが交流しながら、互いにぶつかりあい、新たな才能が巣立っていった歴史があります。
この街に、鉄道と道路の連続立体交差事業の工事が入り、交通・防災など機能が向上すると同時に、この街の魅力をそこねずに、新たな価値付与をしていけるかどうか考え続けてきたのです。

写真家・矢郷桃さん撮影
小田急線の梅ヶ丘から代々木上原までの連続立体交差事業区間のうち1.7キロの「線路跡地」を、日常的には車を通さずにゆっくり散歩ができる道を区で整備します。
また、世田谷区は小田急電鉄と協議の上でゾーニングしながら、お互いに「ひとつながり」の価値創出を準備してきました。世田谷区では、2015年に何度ものワークショップを通して、「人と地域と心をつなぐ」をコンセプトにして、『北沢デザインガイド』をつくり「ひとつながり」の指針としてきたことなどを話しました。
小田急電鉄の星野社長の会見は、2018年3月に小田急線の複々線化が完成し、線路が地下化されたことによって1.7キロ、27500平方メートルの線路跡地が生まれたことを紹介した上で、「下北沢エリアを、私どもは自分らしく生きている人が多く、『多様性にあふれている街』ととらえています。この街をつくっているのは、人であり、お住まいの方、働く方、訪れる方が個性にあふれながら共存していることで、その魅力をさらに高めていると考えています」とした上で、斬新な言葉でこれからの街づくりを表現されました。
さらに、「下北沢エリアの街を『変える』のではなく、街を『支援』することをめざすサーバント・ディベロップメント『支援型開発』」を打ち出しました。コンセプトは「BE YOU シモキタらしく。ジブンらしく」とし、エリア名称を「下北線路街」としたことを発表しました。「シモキタらしさ」というフレームから、これまでの首都圏での都市再開発には見られないユニークな内容となったと感じました。
続いて、京王電鉄の紅村康社長は、2016年から実験的なイベントスペース「下北ケージ」を開設してきたことや、京王井の頭線の高架橋下にすでに駐輪場がオープンしていることを紹介されました。また、詳細は検討中としながらも、高架橋下や周辺に「切れ目なく魅力的なお店を並べ、回遊性を重視し、楽しく歩くことが出来る心地よい空間」を計画していることや、世田谷区からお願いしている「図書館カウンター」(参考・図書館カウンター三軒茶屋)を検討していることなどを報告されました。