世界で二番目にクールな街シモキタの再開発の物語
対立から対話、和解と協働へ。これは単なる再開発ではない/街の写真は矢郷桃さん撮影
保坂展人 東京都世田谷区長 ジャーナリスト
「線路跡地」はどう生まれ変わるか
実際の会見では、世田谷区と小田急がそれぞれ整備が終わった施設や整備が予定されている施設を発表しましたが、ここでは、双方の内容をつなげて西から東へ1.7キロをたどってみたいと思います。

小田急電鉄の記者会見資料より
小田急線の線路跡地には、梅ヶ丘駅から、しばらく新宿方向に進んだところで、線路が地下に入っていきます。
線路跡地の西端には、区で整備した公園「代田富士356(みごろ)広場」があります。ここからの富士山の眺望が素晴らしく、地名がたまたま「代田3・56」だったことから命名され、すでに開園しています。
そこから、小田急の賃貸住宅があり、東京農業大学のサテライトキャンパスやレストランがある複合施設、環状7号線の上は、かつての鉄橋のかわりに区が幅5メートルの「代田富士見橋」をかけました。ここまでは完成しています。
環状7号線と世田谷代田駅の空間には、区の工事により駅前広場が出来ます。世田谷代田の地名は、伝説の巨人「ダイダラボッチ」(代田自治会)に由来しているということから、 交通広場の中央部分にダイダラボッチの足跡を描きます。
さらに、東に進んでいくとびっくりすることに、木造2階建て(一部3階)の和風温泉旅館が出来てくる予定です。温泉の湯は、線路でつなぐ箱根から運んでくるそうです。そして、保育園や店舗付き住宅等をいずれも小田急が建設します。
続いて、区の整備する緑地・小広場があり、将来はここから上部に立体緑地の通路を伸ばします。通路の下には小田急の自転車駐輪場が建設され、すでに完成している下北沢の駅舎へと続きます。駅の南西口周辺にも小田急の商業施設が予定されていて、駅構内には「シモキタエキウエ」が2019年11月に開業、大衆居酒屋や立ち呑み屋も入ります。
駅舎の東側には、区で整備する下北沢駅前交通広場が広がり、交通機能が確保されるだけでなく、ワークショップ等で要望の多かった広場全体を利用したイベントや交流空間を実現することも視野に入れています。日常的にもオープンカフェや文化的発信が可能な広場となるように工夫していきます。
さらに、東北沢方向には、小田急の低層の商業施設やエンタメカフェ、そして約50室の都市型ホテル等が建設されます。区は、通路や駐輪場、小広場、そして東北沢駅前広場等を整備していきます。そして、梅ヶ丘から1.7キロをゆっくり歩くことの出来る通路は、区の施設や小田急の施設と分け隔てのない「ひとつながり」の歩行空間として楽しまれるものにしたいと思っています。災害・事故等の緊急時には緊急車両が通行できるようにします。
すべての施設が完成するのは、2年後の2021年以降となりますが、下北沢エリアの中軸に、これまでにない魅力発信が出来る街づくりをしたいと考えています。

写真家・矢郷桃さん撮影