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あいちトリエンナーレ補助金不交付の支離滅裂

法的根拠も合理性もなし。法の支配を歪め、行政運営の根本も揺るがす過った決定

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

あいちトリエンナーレへの補助金採択の経緯

 最初に今回の手続きを整理しましょう。

 「あいちトリエンナーレ2019」は文化庁の「日本博を契機とする文化資源コンテンツ創生事業 文化資源活用推進事業」という、いかにも安倍晋三内閣が好きそうな補助制度を活用しています。この事業の申請期間は平成31年3月1日~11日と極めて短く、おそら予算成立間際にドタバタと作られた補助制度で、応募する側も審査する側も慌てて対応せざるを得なかったことがうかがわれます(ただし、この点はあくまで推測です)。

 愛知県は「あいちトリエンナーレ2019」でこの一次募集に応募し、遅くとも4月26日には無事採択されて通知の交付・発表がなされ(2019年度「日本博を契機とする文化資源コンテンツ創成事業(文化資源活用推進事業)」採択一覧)、募集要項の定めに従って補助金交付申請書を提出し、交付決定を待っていました。ところが、標準的期間である30日どころか開催期間初日である8月1日を超えても交付の決定がなされず、問題が表面化した今になって、やっと(?)不交付決定がなされたという経緯だと思われます。

 ここで、文化庁が不交付決定の根拠としている「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」通称「補助金適正化法」第6条は、次のように定めています。

◇補助金適正化法
第6条
(1)各省各庁の長は、補助金等の交付の申請があったときは、当該申請に係る書類等の審査及び必要に応じて行う現地調査等により、当該申請に係る補助金等の交付が法令及び予算で定めるところに違反しないかどうか、補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか、金額の算定に誤りがないかどうか等を調査し、補助金等を交付すべきものと認めたときは、すみやかに補助金等の交付の決定(契約の承諾の決定を含む。以下同じ。)をしなければならない。

 一見すると、条文からは、文化庁は「内容が適正であるかどうか」等を判断して、任意に補助金の交付/不交付を決定できるように見えますし、一般に補助金は、これを交付する省庁が任意に交付/不交付を定めてよいかの様に思われています。

 しかし、補助金は本来、法の支配に基づく公平・公正な行政、および法の下の平等という観点から、補助の趣旨にかなうものであれば平等に交付されるべきものです。とはいえ、現実には予算総額は限られ、一定の選別は必要です。そこで、運用として、まずは事前に「申請→審査」して、正式に補助金交付申請を出せる(受理してもらえる)適正な事業を採択したうえで、正式に補助金交付申請が出されたものについては、「法令及び予算に違反しないか」「補助事業等の目的及び内容が適正か」「金額の算定に誤りがないか」等を審査し、違反、不適正、誤りがなければ、「交付の決定(契約の承諾の決定を含む。以下同じ。)をしなければならない。」とされているものと私は理解しています。

 つまり同条は、文化庁が恣意(しい)的に補助金の交付/不交付を決定することを認めるものではなく、むしろ条件を満たす適正な申請がなされたら、補助金の交付を決定しなければならないとしているものと解されるのです。

文化庁が不交付を決定した理由

拡大東京芸術大学前で開かれた集会。教員や学生、卒業生らが、文化庁があいちトリエンナーレへの補助金を不交付にしたことへ反対の声を上げた。文化庁の宮田 長官頑張れという看板も=2019年9月27日、東京芸術大
 文化庁は、今般の不交付決定の理由を、愛知県が「来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実を申告することなく採択の決定通知を受領した上、補助金交付申請書を提出し、その後の審査段階においても、文化庁から問合せを受けるまでそれらの事実を申告しなかった」ため、その事業が①実現可能な内容になっているか、②事業の継続が見込まれるか、の2点において、「文化庁として適正な審査を行うことができなかった」とし、「補助事業の申請手続きにおいて、不適当な行為であった」事としています(文化庁のHP参照)

 そこで前掲の「文化資源活用推進事業 募集案内」を見てみましょう。そこには、「審査の視点」として、

●実現可能な内容・事業規模になっているか。
●計画期間終了後も地方公共団体独自で取り組めるなど事業の継続が見込まれるか。
が挙げられています。

 つまり、文化庁は「あいちトリエンナーレ2019」は、①実現不可能な内容・事業であった ②事業の継続が見込まれなかった、にもかかわらず、それについて申告せず、それゆえ適正な審査がなされなかったという手続き上の違反があったから、正式な補助金交付申請にも関わらず、補助金を不交付決定したとしているのです。

 はたして、この文化庁の説明は、補助金適正化法第6条に基づき、不交付決定をするに値する合理的なものでしょうか?

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 衆議院議員・弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2022年衆院選に当選(新潟5区)。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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