あいちトリエンナーレ補助金不交付の支離滅裂
法的根拠も合理性もなし。法の支配を歪め、行政運営の根本も揺るがす過った決定
米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士
不交付決定に合理性なし
まずもってなのですが、補助金適正化法第6条は、「手続き違反」による不交付決定を定めていません。
仮に、「あいちトリエンナーレ」の実現性、継続性に疑問があったにもかかわらず、申請・審査時にそれが申告されなかったというのであれば、文化庁は「当該申請に係る書類等の審査及び必要に応じて行う現地調査」を行い、「補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか」等を調査したえで、補助金を交付すべきか否かを決定しなければならないのです。
従って、「申請の手続き違反により(内容を見ることなく)不交付を決定した。」という文化庁の説明は、それ自体法的根拠を欠くものだと言えます。
そうではない、手続き違反ではなく、調査のうえで決定したということだとすると、次は「あいちトリエンナーレ」は本当に実現性、継続性を欠くといえるか否かが問題になります。

「あいちトリエンナーレ2019」メイン会場の愛知芸術文化センター。多くの来場者が訪れていた=2019年9月14日、名古屋市東区
前述の通り、今回の企画の一部である「表現の不自由展」が、展示内容についての抗議と、観客に危害を加える旨の脅迫によって中止されたことは周知の事実です。しかしながら、「あいちトリエンナーレ」自体は、現在も実施されており、実現はもちろん可能です。2010年から3年ごと実施され、すでに4回を数えていて、継続性にもなんら問題はありません。「あいちトリエンナーレ2019」は、どう見ても、実現可能で継続性のある事業だとしか評価しようがありません。
仮に、文化庁が「あいちトリエンナーレ」全体についてではなく、「表現の不自由展」という一部の①実現可能性②継続性について論じているとしても、それはあくまで展示そのものが評価対象です。「表現の不自由展」自体は現実に開かれ、継続の意思もあった以上、当然ですが「実現可能で継続性のある展示」だったとしか評価しようがありません。その「実現可能で継続性のある展示」が外部の妨害で中止となった場合、「展示そのものが最初から実現不可能で継続性が無かった」とするのは、明らかに評価すべき対象を誤っています。
仮に、外部の妨害も考慮した実現可能性、継続性を評価するというのであれば、そもそも申請事項に「予想される外部からの妨害」等の項目を入れておくべきですが、公表されている申請用紙にその様な項目はありません。
歪められた審査基準と「法の支配」の原則
つまり文化庁は、
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