メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

小沢一郎が語る「自民党幹事長」時代のこと

(16)リクルート事件、湾岸戦争、都知事選そして幹事長辞任

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

湾岸戦争への対応

 1990年8月2日、サダム・フセイン率いるイラクがクウェートを侵攻、国際連合が多国籍軍の派遣を決定し、翌91年1月17日にイラクを空爆して湾岸戦争が始まった。私は90年9月と91年1月の計2か月、当時所属していた「AERA」から中東に派遣され、イラクからのミサイル襲来下にあったイスラエルをはじめ混乱の中東を取材していた。インド洋を隔てて地球をぐるりと回った東京では、国連派遣の多国籍軍への貢献方法をめぐって自民党幹事長の小沢が苦心していた。多国籍軍の中心、米国は日本に対し戦費の拠出と共同行動を求めていたが、急遽作った国連平和協力法案は廃案となり、合計130億ドルの資金協力だけが実現した。戦後、ワシントン・ポストに掲載されたクウェート政府の感謝広告には日本の名前は載っていなかった。

――小沢さんが幹事長時代、湾岸戦争が起こりました。国連が派遣した多国籍軍にどうやって貢献するか、難しい対応が求められましたが。

小沢 いや、話自体はそんな難しいものではない。国連の常備軍はないことは事実なんだから、希望者を募る以外はないんです。それが多国籍軍です。多国籍軍にもいろいろあって、国連が準国連軍的な性格を与えたものは、現時点では国連軍として認める以外にないと私は考えます。理想だけ言っても仕方ないですから。

 湾岸戦争の時は、イラクに即時無条件撤退を求める安保理決議が採択されたわけだから、この多国籍軍は国連の平和活動だと見なすべきだというのが私の論理です。とすれば、日本は国連加盟の際の日本の宣言通り、あらゆる手段を持って協力しなければならない。これが憲法前文にある国際主義の精神でもあるわけです。しかし、当時だめでしたね。みんな怖がっていました。

――なるほど。そうでしたね。

拡大湾岸戦争への対応策が最大の焦点になった第120通常国会。1991年1月28日から衆議院本会議で海部俊樹首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が始まる前に政府・自民党首脳会議に臨む海部首相(左)と小沢一郎自民党幹事長

小沢 あの時は、いつも日米、日米と言っていた外務省と防衛庁がそろって反対していた。私のところに「絶対反対です」と言ってきた。それで私は「国連派遣の多国籍軍なのに何で参加できないんだ。アメリカは、何も実戦をしなくていい、まさにShow the flagだけでいい、旗だけでもいいから立てろと言われているのに、何で何もできないんだ」と言ってやりました。

――なるほど。

小沢 とにかく大変だった。それでぼくは、とにかく難民輸送だけはやろうと言って、輸送機を派遣するところまでちゃんと計画していたんです。各国の了解を取り付けて、エジプトの空軍基地を借りることまで全部了承を得て、シリアから難民を運ぼうと、そこまで全部セットしたんです。しかし、これもだめでした。

 急遽、最初に出した国連平和協力法案は外務省の官僚がまともに答弁できずにアウトになってしまいました。今のPKO協力法は確かにおかしなところもあるが、何もないよりもいいだろうという話で作ったものです。

――考え方を整理しますと、国連派遣のPKOという事態が生じた場合にはまさに憲法の精神である国際平和の考え方で国連の要請があれば自衛隊を派遣する。一方、安倍首相が考えていることは、米国がかかわる戦争ならば参加できるということでしょうか。

小沢 安倍首相がやろうとしていることは、直接日本と関係のない他国の国際紛争へもアメリカと一緒に行って戦闘できるという話ですから。それは憲法9条を改正しない限りできないんです。だから、私はもちろん反対ですが、安倍さんが海外派兵をやりたいなら憲法9条改正案を出してはっきりそう言えばいいんです。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

佐藤章の記事

もっと見る