核燃料サイクルはマネーもぐるぐる回る
関西電力の原発マネーだけではない。六ケ所村の核燃マネーの恐るべき実態
佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長
議員歳費は買収費用に、談合で入る利益で生活費
長年議員を務めていた元村議は、すべての選挙を買収で通した。村発注事業の請負会社を経営していた元村議は、4年間でほぼ1500万円になる議員歳費をすべて買収費用に充てた。有権者ひとり3万円で500票集めれば当選できた。
買収方法は、有権者を自宅に呼ぶか直接訪ねるかして、1対1の時にカネを渡す。その際に酒が入るケースも多い。また、元村議が経営していた会社は村の有力な公共事業指名業者だった。
「カネは談合で入ってくる。公共事業は自分たちで決めるんだから、談合なんて簡単だ」
元村議はそう説明した。六ケ所村には、村発注の公共事業を受注する土建業者がやたら多かった。元村議によると、談合で入ってくる利益で生活費などをまかない、議員歳費を買収資金に回すという構造だ。
このころ2007年度の六ケ所村の歳入予算の構造を見てみると、約101億円のうち20%は再処理施設などのために国から交付された電源3法交付金、40%は同施設などからの固定資産税収入だった。つまり、核燃サイクル関連のカネがぐるりと回り、最終的には議員歳費が買収資金に化けて、選挙民に落ちている構造である。
関西電力と高浜町の場合には原子力マネーが電力会社に環流している構造だが、六ケ所村の場合には、核燃マネーが選挙の買収資金に化けている構図だ。
これらの資金は元はと言えば消費者の電気料金。原子力マネーや核燃マネーがいかに国のエネルギー政策を歪め、地域の民主主義を蝕んでいるかがわかる。

村役場近くの尾駮沼から見える日本原燃の核燃サイクル施設=2018年6月、青森県六ケ所村