花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
2019年4月の総選挙以来、スペインで連立交渉が半年にわたり続けられてきたが、9月23日、とうとうこれが頓挫、改めて再選挙が行われることとなった。11月10日に予定される。半年の連立交渉は結局何の成果を生むこともなく、再びスタートからやり直しだ。今や、欧州で多党化は一般的といっていい。どの国でも選挙の結果、単独で過半数を獲得することは難しく、連立なしに政権をスタートさせることはできない。連立交渉は、場合によっては2党間に止まらず、3党間に及ぶことも稀でない。だから、どこでも連立交渉は長丁場だ。それにしても、スペインが半年もの間交渉を続け、結局成果なく選挙をやり直すというのはそう多くあることではない。そもそも、やり直したとして、次は交渉がまとまるのか。
スペインでは第二次大戦以来、40年にわたるフランコ独裁が続いた。1978年、ようやく民主化を取り戻したスペインは二大政党制の下、安定した政権運営を続けてきた。二大政党とは、中道左派の社会労働党と中道右派の国民党だ。中道の二大政党が政治を主導する欧州の通常のパターンだ。
この体制に亀裂が生じたのが2010年からのユーロ危機だった。当時、スペインはPIIGSの一員といわれ、ギリシャに続く地中海諸国の債務危機が喧伝された。スペインはGDP規模でEU内5位に位置する経済大国だ。仮に債務が焦げつくようなことがあれば事はギリシャの比でない。世界中が固唾をのんで見守る中、容赦ない緊縮政策がスペイン国民に課され、財政の立て直しが断行された。債務危機はやがて収束に向かっていく。しかし、この緊縮政策は副作用を生んだ。民衆の不満が既存の二大政党に向かい、国民党と社会労働党に任せるだけではだめだ、国民生活を守る別の政党が必要だ、との声が高まっていく。それがポデモス(「我々はできる」党)とシウダダノス(「市民の党」)だ。ポデモスは社会労働党に代わる急進左派、シウダダノスは国民党に代わる中道右派とされる。
しかし、既存政党に対する不満はこれで収まったわけではない。さらに二つの波がスペインを襲う。
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