2019年10月08日
スペインでは第二次大戦以来、40年にわたるフランコ独裁が続いた。1978年、ようやく民主化を取り戻したスペインは二大政党制の下、安定した政権運営を続けてきた。二大政党とは、中道左派の社会労働党と中道右派の国民党だ。中道の二大政党が政治を主導する欧州の通常のパターンだ。
この体制に亀裂が生じたのが2010年からのユーロ危機だった。当時、スペインはPIIGSの一員といわれ、ギリシャに続く地中海諸国の債務危機が喧伝された。スペインはGDP規模でEU内5位に位置する経済大国だ。仮に債務が焦げつくようなことがあれば事はギリシャの比でない。世界中が固唾をのんで見守る中、容赦ない緊縮政策がスペイン国民に課され、財政の立て直しが断行された。債務危機はやがて収束に向かっていく。しかし、この緊縮政策は副作用を生んだ。民衆の不満が既存の二大政党に向かい、国民党と社会労働党に任せるだけではだめだ、国民生活を守る別の政党が必要だ、との声が高まっていく。それがポデモス(「我々はできる」党)とシウダダノス(「市民の党」)だ。ポデモスは社会労働党に代わる急進左派、シウダダノスは国民党に代わる中道右派とされる。
しかし、既存政党に対する不満はこれで収まったわけではない。さらに二つの波がスペインを襲う。
第一は、2015年の難民危機によるポピュリズムの高まりだ。欧州各国では、ポピュリスト政党が相次いで急伸、一挙に政治が不安定化する。しかし、スペインは長年のフランコ独裁という苦い経験がある。スペインは別だ、と大方が思う中、2019年、とうとうスペインでも極右政党が成立する。ボックスはいきなり24議席を獲得した。
第二は、カタルーニャ独立運動を契機として起こった。2017年、長くくすぶっていたカタルーニャ独立問題が再燃、10月の州民投票で独立が可決されたのを受け、カタルーニャ州議会による独立宣言に至る。運動はその後、独立派指導者の司法手続き実施等により下火になっていくが、この問題はスペイン政治に少なからぬ影響を及ぼすことになった。
カタルーニャ住民にとり長期にわたる中央政府の圧政に抵抗し立ち上がることはかねてからの念願だ。元々、マドリッドを中心とするスペイン中央地域とカタルーニャやバスクがある北部地域は同一に論じられない。カタルーニャの人々から見ればマドリッド等、中央地域は片田舎に過ぎず、歴史的に文化、経済両面において北部が優位に立つ。特に経済は、産業革命を主導したのが北部だったとの歴史的事実に加え、国境を越えたフランス各地との結びつきが強いこともあり、農業中心の中央地域をはるかに凌ぐ豊かさだ。カタルーニャの人々は、スペインとの結びつきよりEUとの一体感のほうが濃厚ですらある。しかし中央政府から見れば、
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